はじめまして。
水曜14:00~15:30でラーニングサポートを担当します、能登と申します。
よろしくお願いします!
さて、今回初めてのブログ投稿ということで、まずは自己紹介をしたいと思います。
自己紹介
学科・学年:化学科 修士1年
所属研究室:天然物化学研究室(末永研究室)
研究テーマ:天然有機化合物の全合成
得意分野:有機化学、教職課程
サークル:竹之会
趣味:御朱印集め、読書
大まかな自己紹介はこんな感じでしょうか。
今回は私の行っている研究の内容を詳しく紹介させて下さい。
「全合成」って何?
皆さんは「全合成」という言葉をご存知でしょうか。「全合成」とは、自然界に存在する有機分子を、市販の試薬を原料として有機合成し、完全に再現することを言います。自然界に存在する有機分子のことは「天然物」と呼んだりします。
全合成の言葉の意味を聞いて、(天然物を合成って…わざわざ合成する必要あるの?自然界にあるなら試薬から合成する必要はないんじゃない?)と思う方もいるのではないでしょうか。
確かに天然物は自然界に存在していますが、その量はごくごく微量であることが多いため、大量に手に入れるためには人工的に合成する必要があります。また天然物には様々な機能を持った化合物が存在しており、これまでに発見されている物の中には、病気を媒介する寄生虫やがん細胞、菌やウイルスを殺す作用があるものが存在しています。しかし、天然物のそういった機能を明らかにしたり、機能を発現するメカニズムを調べるにはある程度の量の化合物が必要になります。そのため全合成研究を行って安定して化合物を供給できるようにしているのです。
また、全合成は天然物の構造の解明にも役立ちます。新しく発見された天然物の構造が分からないとき、全合成を行って合成した分子のデータと天然物のデータを比較することでその構造を明らかにすることが出来るのです。
全合成の魅力
全合成の難易度は天然物の構造によって様々ですが、たいていの場合研究の途中で何か問題にぶつかり、悩むことになります(これはどの研究分野でも同じだと思いますが…)。化合物の構造や大きさによっては、何十反応もステップを積んでやっっっと全合成が達成されるため、天然物が出来上がった時の達成感は本当に大きいです。
しかも、ただ天然物が合成できればいいわけではなく、より無駄がなく短工程で、美しい合成経路を生み出せるかどうかが研究者の腕の見せ所になります。そのためにこれまで知られていなかった新しい反応を生み出し、それを天然物の全合成に応用する研究グループもあります。いかにして天然物を合成するか、全合成研究者は皆美しい合成経路を目指して頭を悩ませているのですね。
天然物が秘める可能性
天然物が生物にどんな影響を及ぼすのか、どのように働いて生物に影響が出るのかが分かれば、より強力に病気を治療できる薬の開発に役立ちます。例えば、ある特定の病気に効く薬を作ろうと思っても、人間が考え、生み出すデザインには限界があります。そもそもどんなものを作れば薬ができるのかをゼロから考えるのは難しいですよね。でも、新しく発見された天然物が何か特定の病気に強力に効くことが分かれば、その天然物の構造をヒントに新しい薬の設計をすることが出来ます。合成研究を経て天然物のどんなところが病気の治療に重要なのかを明らかにすることで、それを模倣して新しい薬を開発することが出来るのです。ちなみにこれまでに発見されている天然物の中には、がん細胞を殺す作用があることが分かり、研究の末にその天然物を模倣したがん治療薬が開発され、実用化されている例もあります。
新規天然物の発見と合成の研究は、創薬に大きく貢献する可能性を秘めているのです。
「天然物化学」のすゝめ
私の所属する天然物研究室では、沖縄や奄美大島などの地域で採集してきた海洋シアノバクテリアから、新しい天然物を発見するチームと、発見された天然物の全合成に取り組むチームに分かれ、日々研究を行っています。私はこのうちの全合成に取り組む方のチームにいる感じですね。一人一つずつ、自分が合成するべき天然物を与えられており、その全合成研究に取り組んでいます。
新しい天然物の発見は宝探しのようなもので、薬になる可能性を秘めた物質を様々な方法で追い求めます。自分が発見した・合成した物質が薬になるかも!なんて、夢があってワクワクしますよね。
全合成まで達成できた後は、その天然物の生物活性とそのメカニズムまで研究することもあります。天然物と生体内の物質の相互作用を……と、研究についてはまだまだ語れますが、これ以上は止まらなくなるのでまたの機会にしようと思います。
これまで語ってきたように、天然物化学、天然物の全合成には魅力がいっぱいあります。皆さんが服用している薬も、もしかしたら天然物を模倣して作られたものかもしれません。興味が出た方は是非、調べてみてください(*'▽')
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
能登