2020年12月14日月曜日

有機化学の授業で反応機構に苦戦している人へ、『困ったときの有機化学』

こんにちは。修士1年の江口です。秋学期から木曜担当になりました。引き続きよろしくお願いいたします。
本日は、有機化学について、おすすめの参考書を紹介していきたいと思います。

有機化学の授業では、大量に反応が登場しますが、そのすべてを覚えるというのはなかなか現実的ではないです。重要なのは、反応の基本的なルールを理解し、どのような反応が起こるかを予想できるようにすることだと思います。
そのような反応の基本的なルールを学ぶのにおすすめなのが、『困ったときの有機化学』です。この本では、学科の授業で最初の方にサラッと流されてしまう内容についても、とても丁寧にわかりやすく解説されています。そしてこの、「授業の最初の方で触れる内容」が、実は後に色々な化学反応と反応機構を理解するうえで重要になってきたりします。有機化学がさっぱりわからない!という人や、授業の内容をよく理解できているとは言えないという人におすすめです。また、次のような困りごとのある人も読んで損はないはずです。

・ケクレ構造式の書き方がいまいちわかってない
・形式電荷をどうつければいいのかよくわかっていない
・共鳴構造のイメージがわかない
・曲がった矢印の書き方がピンと来ない
・ニューマン投影式、いす形立体配置、フィッシャー投影式の書き方がよくわからない

困ったときの有機化学. 上』D. R. クライン著, 竹内敬人, 山口和夫, 木原伸浩訳


困ったときの有機化学. 下』D. R. クライン著, 竹内敬人, 山口和夫, 木原伸浩訳



上のものは2018年に出版された第2版です。理工学メディアセンターには旧版もあります。わたしは当時旧版を使っていました。旧版の内容は、第2版『困ったときの有機化学 上』とほとんど一緒です。これらの『困ったときの有機化学』シリーズは、『Organic chemistry as a second language』という本の邦訳版となっています。「原著を読んでみたい!」という人や、「有機化学を勉強するのと同時に英語力も鍛えたい!」という人は以下のリンクにある原著にぜひチャレンジしてみてください。first semester topicsが上巻、second semester topicsが下巻に対応しています。







「ある程度反応機構にも慣れてきたし、試験対策にもっと練習を積みたい!」という人へは、『演習で学ぶ有機反応機構』がおすすめです。この本は、大量の反応機構の問題が難易度別にA問題、B問題、C問題に分けて収録されており、巻末には反応機構の詳細な解説が掲載されています。そのため、自学自習にぴったりです。ただ、なかなか骨のある問題が多く、A問題でも解くのは結構大変かもしれません。

以上で、おすすめの有機化学の参考書紹介を終わります。「有機化学がよくわからないよ~」という人はぜひ『困ったときの有機化学』を読んでみてください!

江口

2020年11月17日火曜日

【参考書紹介】新火曜担当(原)

こんにちは! 
今年度からメディアセンターの学生スタッフを担当させていただいている原です。 
秋学期からは、火曜担当へと変更させていただくことになりました。引き続きよろしくお願いいたします! 

前回のブログでは、私の簡単な自己紹介と、研究分野であるAI(人工知能)の話などを少しさせていただきました。

今回は、私がこれまで読んできた中で、非常に勉強になったAIに関する参考書を紹介させていただきたいと思います。 AIなど事前知識がない方でも理解できるような基本的な内容の参考書から、実際にプログラムを組んでみたい人向けの実践的な参考書まで幅広く紹介できればと考えています。 

 【初級者(いままでAIの勉強をしたことない人)向け】  


 AI研究の第一人者である東京大学大学院工学系研究科准教授、松尾豊先生による人工知能の入門書です。この本ではAIと人類が歩んできた進化の歴史や、AIの将来について書かれています。難しい数式やプログラムに関する内容はほとんどなく、本質をとらえたわかりやすい構成になっているため、いままでAIを深く学んだことのない人でも、読むことができると思います。 私自身もAIの知識を身に着けるために、学部時代にまずこの本を読んだのを覚えています。 また、この本は機械学習や深層学習などある程度AIに馴染みのある人にもオススメです。特に、日本ディープラーニング協会主催のジェネラリスト検定(G検定)の推薦図書にもなっており、研究者や専門家がAIの全体像を改めて見直すきっかけにもなると思います。 


 AIを学ぶ上で大切なことは、AIの体系的な知識を身に着けることと、それを実装(プログラミング)する能力を磨くことです。特に、機械学習やディープラーニング(深層学習)などのAIの分野はPythonで実装されることが多いです。 Pythonは、無料でだれでも簡単に環境を構築できる、他のプログラミング言語に比べて理解しやすいなどの利点があり、現在最もホットなプログラミング言語となっています。そのため、Pythonの入門書は大変多く出版されており、どの参考書で勉強すべきか初学者の方には悩みどころでもあると思います。 今回紹介した本は、Pythonのプログラムを理解するために必要な最低限の知識を短時間で習得するという点に重点を置いており、非常に効率の良い本であると思います。この本よりも、内容が豊富かつ応用まで網羅した本も多々出版されていますが、私個人の意見としては、いきなりPythonの応用まで勉強する必要はなく、最重要事項だけ抑えた後は、実際に機械学習やディープラーニングのコードを実装していく中で、Pythonの使い方を学んでいけばいいと思います。 

 【中級者(AIの勉強をした経験はあるが、実装などには自信がない人)向け】 


 この本は、プログラミング言語Pythonを使って機械学習を実装することを目的とした本です。 レベルとしては機械学習やPythonを少しかじったことがあるけれども、実際にscikit-learnなど機械学習のモジュールの使い方に慣れたいといった読者を想定しています。 Pythonで機械学習を学べる本は、この本に限らずたくさんありますが、理論面と実装面どちらもバランスよく掲載されているという面では、この本が一番ではないかなと思います。 AIに関する参考書では、海外の文献を日本語訳して出版されているものが多いのですが、日本語版の欠点として、訳がぎこちない、学問的にしっくりこないなどの指摘がされることがよくあります。 ですが、この本は、AIに造詣が深い研究者による訳語本であるため、比較的理解しやすい日本語になっているとをいう点もオススメです。 ただ、機械学習の中でも特に注目を集めているディープラーニング(深層学習)に関する記述は少ないので、ディープラーニングを重点的に学びたい方は、他の本を読む必要がある事に注意してください。


 この本は、AIの中でも特にディープラーニングの理論と実装に重点を置いた本です。 Pythonによるディープラーニング実装に関する本は、これまで多数出版されていますが、それらの本の多くは、実装に重きをおいており、ディープラーニングの詳細な理論の説明(特にディープラーニングを理解するために必要な数学的背景)は省略されています。 ですが、この本では、ディープラーニングの数学的背景を詳細にかつ丁寧に説明しています。また、行列や微分など、導入のための数学的準備も丁寧にまとめられているため、数学に不安のある文系の方でも理解することができると思います。 そして、私がこの本をオススメする一番の点は、Pythonによるコードを一から書いていく点です。ほとんどの参考書では、ディープラーニングの実装は専用のモジュール(KerasやPytorch)を利用して書かれているため、プログラムの中で実際にどのような計算がされているか理解することができません。そのため、ディープラーニングの仕組みはわからないけど、とりあえず実装はできるといった状態に陥る危険性があります。 この本では、ディープラーニングの数学的背景を理解した上で一から自分の手でコードを書いていくので、完成までに時間はかかりますが、しっかりとした理解を身に着けることができると思います。 私の経験上、一度自分の手でディープラーニングを実装できるようになってから、専用のモジュールなどを使って実装することをオススメします。 

 【上級者向け(AIの理論・実装ともに自信があり、さらに奥深い内容まで学びたい人)向け】
 

 ディープラーニングの基本的な仕組み、実装の手順を理解したら、次段階としてディープラーニングの更なる応用を学びましょう。今回紹介する本では、ディープラーニングの中でも、画像認識に特化した畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)や時系列分析に特化した再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)など様々な応用分野が紹介されています。 またこの本では、Kerasと呼ばれるPythonのディープラーニング用のライブラリを用いて、ディープラーニングを実装しています。Kerasを用いることで、ディープラーニングを非常に簡単に実装することができます。中級者向けの項目で紹介した本などを参考にして、ディープラーニングのコードを一から実装できるようになった後には、Kerasなどの専用ライブラリを利用した実装法もマスターしておくといいでしょう。 唯一この本の欠点を挙げるとすれば、日本語訳が少しぎこちない点です。この本の著者は、Kerasの開発者でもあるので、英語に自信がある人は原文のまま読む方が理解しやすいかもしれません。 


 最後に紹介する本は、データ分析の技術に特化した本です。この本は、Kaggleと呼ばれるデータ分析コンペで高得点をたたき出すために必要な、前処理や検証方法など技術を一冊に網羅した本です。 Kaggleは世界中のデータサイエンティストたちがさまざまなテーマでデータ分析の技術を競い合うコンペで、上位入賞者は高額の賞金や就職先の紹介など様々な恩恵を得ることができます。 また、Kaggleにはデータサイエンティスト通しの交流の場が用意されていたり、上位入賞者のコードやデータ分析法が公開されているため、データサイエンスを学びたての人であっても気軽に参加することができます。機械学習やディープラーニングをある程度理解し、Pythonで実装できるようになった人は、Kaggleに積極的に参加し、実際のデータ分析に触れてみることを推奨します。 この本では、実際のデータサイエンティストたちによる、Kaggleで上位に入賞するためのさまざまなノウハウが紹介されているため、この本を参考にしてKaggleで上位入賞を目指してみましょう。 

 ここまで、初級者向けから上級者向けまでいくつか参考書を紹介させていただきました。 いきなり難しい本で勉強する必要はないと思うので、まずは自分が読みやすいと感じるレベルから始めるといいでしょう。 前にも少し触れましたが、AI系の勉強をこれから始めたい人は、是非、機械学習に関する(数学的)知識とそれを実装するプログラミング能力を同時に磨く必要があることを意識してください。

2020年10月9日金曜日

【証明の書き方】水曜担当 富岡

水曜担当の数理科学科修士1年の富岡です.今回は,レポートの答案を書くときの注意点について述べたいと思います.証明中の文章を一言一句絶対にこう書かなければならないなどというわけではなく,あくまで参考として活用してください.



・「任意の」と「ある」
 例えば,$V, W$ を実ベクトル空間とし,線形写像 $T : V → W$ が具体的に与えられたとき,$T$ が単射であることを示そうとしているとします.方針は $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示すことにします.そこで,証明のはじめに「$Tv = 0$ とすると,〜〜」というように書いたとしましょう.このとき,まずい点が二つあります.一つは,「$v$ が何者か明記されていない」点です.この場合,文脈や $T$ の定義を考えれば「$v$ は $V$ の元である」ことは明らかといえば明らかですが,新しく導入された記号については必ずそれが何を表しているのか説明するべきです.意味が一意に定まる場合でも,いきなり未定義の文字が出てくるのは証明の読みにくさに繋がります.さて,「$v$ は $V$ の元である」ということは良いとしましょう.このとき,もう一つまずい点があります.それは「$v$ は 任意に取ってきた元なのか,特定のものを選んで取ってきたのか明記されていない」点です.「$V$ の任意の元 $v$ に対して 〜〜が成立つ」と「$V$ のある元 $v$ に対して 〜〜が成立つ」という二つの命題は全く異なる主張を述べているので,「任意の」なのか「ある」なのかをはっきりさせなければ,証明しようとしている主張が何かが分かりません.いまの場合は「任意の」が正解で,「$V$ の任意の元 $v$ に対し,$Tv=0$ とする.このとき,〜〜」や「$V$ の元 $v$ を任意に取る.$Tv=0$ とすると,〜〜」などと書くと良いでしょう.
 余談ですが,証明において「$V$ の任意の元 $v$ に対し,$Tv=0$ ならば,$v=0$ である」という主張が証明されたとすると,ここで示したのは $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ になります.元々は $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示そうとしていたので, $\{0\} \subset \mathrm{Ker}(T)$ も本当は示さなければいけません. しかし,$\mathrm{Ker}(T)$の定義からこれは明らかです.$\{0\} \subset \mathrm{Ker}(T)$ の部分は空気のような事実なので,非自明な $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ だけを示して $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示したことにして証明を終えても個人的には問題無いと思います.このことについてはレポートの採点基準によるので,不安な人は「 $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示す.$\{0\} \subset \mathrm{Ker}(T)$ は $\mathrm{Ker}(T)$ の定義から明らかなので, $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ を示す.$V$ の任意の元 $v$ に対し,$Tv=0$ とする.このとき,〜〜である.よって,$v=0$ である.すなわち, $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ が示された」のように書くと安心だと思います(これで減点食らったらすみません).





・例の構成
 問題:実2次行列 $A, B$ に対して,$AB=BA$ は常に成立つか.成立つならば証明を,成立たなければ反例を挙げよ.

 解説:答えはもちろん「成立たない」なので,反例を挙げる必要があります.ここで,反例を挙げるとはどういうことでしょう?どういう作業が反例を挙げるということでしょう?与えられた命題に対し,反例を挙げるということは「命題の否定が成立つような具体例を述べる」ということです.いまの場合,「実2次行列 $A, B$ に対して,$AB=BA$ は常に成立つ」が与えられた命題で,その否定は「実2次行列 $A, B$ に対して,$AB=BA$ が常に成立つとは限らない」,すなわち「実2次行列 $A, B$ で $AB \neq BA$ となるものが存在する」です.よって,すべきことは「$AB \neq BA$ となる実2次行列 $A, B$ を具体的に与える」ことです.例えば \[ A=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}, B=\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \] とすれば \[ AB=\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}, BA=\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \] なので,$AB \neq BA$となることが分かります.これで,反例を挙げられたことになります.しかし,例えば \[ A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}, B=\begin{pmatrix} e & f \\ g & h \end{pmatrix}, \ AB=\begin{pmatrix} ae+bg & af+bh \\ ce+dg & cf+bh \end{pmatrix}, \\ BA=\begin{pmatrix} ea+fc & eb+fd \\ ga+hc & gb+hd \end{pmatrix} \] とすれば,$AB \neq BA$となることが分かる,というのは誤りです.この解答では,$AB$と$BA$の成分が一見違って見えても,奇跡的にどんな$a, b, c, d, e, f, g, h$に対しても実は計算すると値が一致するかもしれないという可能性を潰し切れていません.もちろん,そんなことはありえないわけですが,具体的な値で確かめない限り証明にはなり得ません.よってこれでは,反例を挙げたことにはなりません.たまにこのような勘違いをしている人もいるので参考にしてみてください.








・背理法依存症
 「任意の正実数 $a, b$ に対し,$a < b$ ならば $\sqrt{a} < \sqrt{b}$ が成立つ」という命題を考えてみましょう.これの証明として例えば次のようなものがあります:

 もしある正実数 $a, b$ で $a < b$ かつ $\sqrt{a} \geq \sqrt{b}$ となるものが存在したとする.このとき, $\sqrt{a} \geq \sqrt{b}$ の両辺を2乗すると $a \geq b$ となり, $a < b$ と矛盾する.よって,任意の正実数 $a, b$ に対し,$a < b$ ならば $\sqrt{a} < \sqrt{b}$  とならなければならない.

  背理法による証明です.これでも証明として何も問題ありません.ところで,この命題を証明するには背理法は必要でしょうか?実はこの命題の証明には背理法は必要ありません.実際,$\sqrt{b}-\sqrt{a}=(b-a)/(\sqrt{b}+\sqrt{a}) > 0$ から主張が従います.背理法を使わなくても証明できるなら,背理法を使わない方が良いというのが,おそらく数学をやっている多くの人たちの中での共通認識だと思います.理由の一つに,背理法を避けられない部分を明らかにしたいという論理学的な観点があると思います.また,実用上の問題として,背理法の議論の部分は正しくない仮定から推論を重ねているので,議論をリサイクルすることができません.どうせ証明をするなら,直接的な証明を試み,証明の中で使われた命題を個別に抜き出しておいた方が得だと思います.もしかしたら,その命題が他の場面でも役に立つことがあるかもしれませんし,何より証明の構造がよく理解できるようになると思います.
 初学の段階では,証明の方針が立たないととりあえず背理法を試みがちな気がします.「定義に従って示す」ということに慣れていないとそのような状態に陥りやすいと思います.前回のブログでも書きましたが,自分で証明を考えるときは,「用語の定義は何か,仮定は何か,示したい結論は何か,仮定と結論を論理式や数式で表すとどうなるか」をはじめに確認してから行うのが良いです.この作業に慣れることで「定義に従って示す」ということが徐々にできるようになると思います.どうしても背理法を使わなければならないときは,ギリギリまで背理法を使うステップを保留し,最後の仕上げとして「ところで,〜〜と仮定する.このとき,今までの議論から〇〇ということが分かるが,これは××に矛盾する.よって〜〜ではない」のようにすると,背理法を使うまでの議論はリサイクルできるようになっていますし,証明の構造も良く分かるようになると思います.




 他にも気をつけた方が良いことはあります.例えば,とても基本的なことですが,「証明中の文章が日本語として読めるか」です.数学独特の構文に引っ張られてしまっているせいなのか分かりませんが,接続詞が不自然だったり,明らかに日本語としておかしい文章を書いたりしていることが多々ある気がします.証明を書き終わったら,一度読んでみて不自然な箇所がないか確認してみてください.
  以上のことに気をつけて証明問題に取り組んでみてください.読みやすい証明,すなわち,論理的に明快な証明を書くことは自身の数学力の向上に繋がるので,ぜひこれらのことを意識して頑張ってください.



それでは今回はこの辺で.See you next time !

富岡











2020年7月7日火曜日

化学Aや物理化学系の授業の教科書紹介

こんにちは。
火曜担当の江口です。

春学期はもう後半ですね。
今学期はすべてオンライン授業ということで、例年より課題が多くて大変だという話も聞きます。
上手いこと情報収集をして、乗り切っていきたいですね。

今回は、化学Aや物理化学系の授業で使える教科書について紹介します。
授業内で配布される資料があるかと思いますが、それだけだと、なかなか理解が進まない・・・という人は他の教科書・参考書にあたってみるといいと思います。

山を登るにも、道がいくつもあるように、同じ現象を説明するのにも、説明する方法はいくつもあります。
授業の資料ではわからないなーという部分があったら、ほかの教科書でその部分がどのように説明されているかチェックしてみるといいと思います。


アトキンス物理化学 【指定資料】
 非常に有名な教科書。様々な物理化学系の授業で教科書に指定されています。邦訳は2017年に第10版が出ています。理工学メディアセンター本館一階の、指定資料コーナー(431@A6@2-1-R2)に置いてあります。古いバージョンも、本館2階や、別館にあります。


バーロー物理化学 【指定資料】
 これもまた有名な教科書。最新版は第6版。アトキンスで疑問に思った部分があったらこっちで調べてみると良いかもしれません。こちらもまた、理工学メディアセンター本館一階、指定資料コーナー(431@B2@1-1@C.4)に置いてありますし、本館2階にも置いてあります。

 物理化学の隠れた?名著。説明、式の導出が丁寧でわかりやすい。演習問題の解答は、別冊(英語版のみ)。本館の2階にあります。

他にも、ムーア物理化学カステラン物理化学アルバーティ物理化学など、様々な教科書があります。中身を見てみて自分に合ったものを選び、気に入ったら購入すると良いと思います。

上に挙げた教科書はすべて、理工学メディアセンターで所蔵しています。是非活用してみて下さい!



【指定図書】とは?
授業シラバスの教科書・参考書欄に記載されている図書のことです。
その分野を学ぶ際の非常にオーソドックスな本と言い換えても良いかもしれません。
理工学メディアセンター本館1階に、指定図書コーナーとして本がまとめられています。
こういったものも活用していきたいですね!


以上で、役に立ちそうな教科書紹介を終わります。
いずれも理工学メディアセンターに蔵書があるものなので、内容を自分の目で確かめ、自分に合った教科書を使って学んでいって下さい!

江口


2020年7月3日金曜日

【番外編】理工学部全体の4%しかいないレア学科:化学科について

2018-19年度に化学と英語を中心に相談を受け付けていた、元スタッフの菅野です。
昨年2019年のノーベル化学賞はリチウムイオン電池に関してで、日本人の受賞者に注目が集まりましたね。本当に素晴らしいことだと思います。


では慶應の化学はいまどういう状況なのか?
今回は「実学のすゝめ 番外編」ということで、慶應の基礎化学を担っている化学科について、化学科の学生である著者(現在 理工学研究科後期博士課程1年)がざっくりと紹介します。

0. 内容

1. 数字でみる化学科
2. どういう学生がいるのか?
3. 研究室紹介


1. 数字でみる化学科

4%

→→→慶應理工学部全体(約1000人)に占める化学科の人数(40人)。キャンパス内で出会えたらラッキー!な激レア人種です。逆に、学科内の人はみんな知りあいになり、どのサークルに入っているとか何のバイトしているとかまで大抵知っています。

5:1

→→→男子:女子のおよその比率。理工学部の中でも女子学生の比率が比較的高いと思います。

2人

→→→先生1人に対する学生の数。先生との距離がとにかく近く、国立大学レベルかもしれません。

7/25→14/25

→→→2年生と3年生のおよその週コマ数2年生の授業はおよそ週7コマですが、3年生はおよそ週14コマと2倍になります。週7コマというのは、他学科2年生と比べてもかなり時間のゆとりがあるのですが(要するにヒマ)、3年生は少し忙しめになります。

2. どんな学生がいるのか?

実は化学科は、第一希望で入ってきた学生と、そうではない学生がおよそ半々くらいという二極化が起きている珍しい(?)学科です。その二極化というのも極端で、第一志望でくる子は学問越え(注1)してでも来る子がいる一方で、そうでない子は最低志望順位(注2)で来る学生も多くいるほどです。
二極化しているがゆえに、実にバラエティ豊かです。第一希望で来る学生は、本当に優秀な人が多いです。学部時代の成績におけるA-Cが150単位という成績オバケもいました。実際に私の知る限りでは、矢上賞を受賞する学生が毎年のように居るほか、慶應理工学部のパンフレットに写真掲載された学生もいました。一方、第一志望でなかった学生もユニークな人が多いです。例えば化学以外の道を見出した学生として、プロギャンブラーになった人、某国立大学の法学研究科に進学した人などを知っています。しかしもっと興味深いのは、化学科に不本意ながら入学しても、次第に化学を好きになる学生が意外と多いということです。実は私も、化学科は第一志望ではありませんでした。しかし3年次の学生実験と4年次の卒業研究で有機化学に目覚め、修士課程はおろか博士課程にも進学するほどにまでなりました。

(注1)(注2)
慶應理工学部では、入学時に将来の学科の大枠は決まっていますが、1年次は教養課程に近く、理工学全般を広く学びます。ちなみに化学科へ進学するためには学門3(2020年度より学問E)しかなく、他の学門から行くには学問越え(後述)という超難関を突破するしかありません。
2年次に専門学科に別れますが、成績に応じて行くことのできる学科がある程度制限されます。人気の高い学科は競争が激しく、第一志望で行くことのできない学生もでてきます。一方、成績が飛びぬけて良い学生に対しては、本来進学できない学科へ移ることが許される特別な制度があり、これを「学問越え」といいます。


3. 研究室紹介

●化学の分野

一般的に化学は、大きく分けて3つの分野に分けることができます。ただし近年、境界はあいまいになってきているうえに、他分野との融合も著しくなっているので参考までに。

有機化学:炭素の化学。食べ物、プラスチック、生物をはじめとして身の回りのほとんどが炭素を含む有機化合物です。

無機化学:炭素以外の元素の化学。よく知られている無機化合物としては、半導体や金属材料などがあります。

物理化学:化学を数学的に解析する分野。化学反応を計算によって予測するなど、近年目まぐるしい発展がみられます。

●研究室(2020年度)

ここでは、私の個人的な見解を簡単にのせます(重要)。正確かつ詳細な情報に関しては公式HPをご覧ください。

有機金属化学研究室(垣内史敏教授)
新しい化学反応の開発を研究している。世界を驚かせた初の実用的炭素ー水素結合の官能基化反応(村井反応)やチェーンウォーキングという現象を利用した化学反応の研究が有名。

天然物化学研究室(末永聖武教授)
自然界に隠されている有用な有機化合物を見つけ、その利用を目指している。シアノバクテリア由来の新規物質発見などが有名。

機能材料化学研究室(羽曾部卓准教授)
人口光合成や太陽電池、光る物質の開発など光化学の研究を主に行っている。ほんの刹那の化学反応(ナノ秒=0.000000001秒。瞬き一回はおよそ0.2秒)を分析したりする高い装置がある。

生体分子化学研究室(藤本ゆかり教授)
免疫に関わる化合物に関して広く研究している。新規化学合成法の開発だけでなく、免疫機構にどう関与しているかの生化学についても研究している。

・反応有機化学研究室(山田徹教授)
新しい化学反応の開発を研究している。二酸化炭素を有用化合物へと変換する化学反応や、マイクロ波を利用した化学反応が有名。

無機物性化学研究室(栄長泰明教授)
新しい機能材料の研究開発を行っている。光で磁性を制御する材料や、特にダイヤモンド電極を用いた新規分析法や新規合成法の開発が有名。

表面化学研究室(近藤寛教授)
放射光X線技術を用いて化学反応の解明を行っている。特に現代科学に欠かせない「触媒」の機能解明に関する研究が有名。

・物理化学研究室(中島敦教授)
新しい物質概念の創出を目指し、原子をたくさん凝集してできた「ナノクラスター」に関して研究している。特に多成分クラスターに力を入れており、磁性クラスターや巨大クラスターなどが有名。

・生命機構化学研究室(古川良明准教授)
金属を含むタンパク質について研究している。特にタンパク質が、銅という金属をどう補足するのかを調べ、その解明によりALSなど難病治療への応用も目指している。

・理論分子化学研究室 (畑中美穂 准教授)
2020年度新設。コンピュータを用いた計算により、化学現象を理解することを目指している。新しい触媒や発光材料のシミュレーションや、機械学習による材料特性の予測を行っている。


いかがでしょうか。
化学科は、学生も教員も研究も多様でユニークです。

今回はこの辺にて。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


菅野

2020年6月15日月曜日

【読書のすゝめ】月曜日担当

こんにちは

ラーニングサポート 月曜日担当(建築系)の川本です
今回は私が学部1年生の頃に出会ったおすすめの本を5冊ほど紹介したいと思います


『赤と黒』 スタンダール著


「赤と黒」は実際に起きた事件などを題材にとった、フランスの作家スタンダールによる長編小説です。1954年に刊行されたサマセット・モームによる「世界の十大小説」に選ばれた古典作品でもありとても有名なものです。
主人公である野心的な青年、ジュリアン・ソレルを通して青春や恋愛を描いているとともに、「1830年代史」として実際に起きた事件などを題材として社会を鋭く批判しています。階層闘争から描かれた青年の野心に色々なことを考えさせられた作品です。

『ゴリオ爺さん』 バルザック著


「ゴリオ爺さん」は1819年のパリを舞台とした小説で、こちらも先に述べた「世界の十大小説」のひとつです。ゴリオが娘の不孝を嘆きながら孤独に死んでいく様が描かれた悲劇の作品であり、誠実さや愛情への裏切りがリアリティをもって表現されています。冒頭では登場人物と舞台設定を細かく説明しており、それらを把握することで読みやすくなると思います。

「地下室の手記」はロシアの小説家ドストエフスキーによる中編小説です。「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」など著名な作品が多くありますが、なかでも私はこの「地下室の手記」が一番のおすすめです。
主人公の過剰なまでの自意識が面白くもどこかで共感できる作品です。自分の内面と向き合うきっかけになり得るおすすめの本です。

「ノルウェイの森」は村上春樹による長編小説です。とても有名な作品なので、知っている方も多いのではないでしょうか。主人公が学生時代を回想する視点で描かれているため、この本を大学入学したての頃「大学生活=ノルウェイの森」という想像(舞台は1970年頃なので実際は全く違いましたが)をしながら楽しく読みました。様々な小説や映画などの文化が引用され登場するので、そのような興味を広げていくきっかけになり得るおすすめの本です。

『辰野金吾』 河上眞理、清水重敦著


辰野金吾は東京駅や日本銀行本店をはじめとする建築作品を設計した日本建築界の礎を築いた建築家のひとりです。
工部大学校(現在の東大工学部)の第一回生として入学し、曾禰達蔵ら同期と切磋琢磨し学ぶ様子やヨーロッパで学んだ「建築」を日本に根付かせるために苦心した歴史が描かれています。
良い作品を設計し、国を発展させるために努力する姿勢にこの本を通じて触れることで、大学で学問を修めるうえでのモチベーションになるはずです!

今回は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

川本

2020年6月9日火曜日

2020年度 木曜担当 自己紹介と参考書紹介

こんにちは.

今年度のラーニングサポート木曜日担当 数理科学科修士1年の富岡駿允です.

簡単な自己紹介をします.私は数理科学科の勝良研究室に所属しており,現在は作用素環論についての研究(というか勉強)をしています.私はもともと量子力学の数学的構造に興味があり,そのために関数解析という分野を少し勉強していました.作用素環論の勉強を始めたのは勝良研究室に所属してからです.作用素環論はvon Neumannという人が量子力学を記述するために必要な数学として導入したと言われています.勝良研は作用素環論の研究室なので,私の興味に合っています.また,趣味的にですが,私は幾何も面白いと思っているので,幾何の授業の質問があれば,私も一緒に考えて勉強したいなぁというつもりでいます(質問に答えられなかったらすみません).





さて今回は,大学1年生の皆さんに向けて,数学を自習できるように参考書をいくつか挙げてみようと思います.授業を聞くだけでなく,自分で本を読んで数学を勉強する時間はとても大切なので,ぜひここに挙げている参考書を活用してみてください(もちろん,ここに挙げている参考書以外の本で勉強するのもアリです).




線形代数




微積分




集合・位相






定番な本や私が個人的に気に入っている本を挙げました.他にも本はたくさんあります.書店等で中身を見て自分に合ったものを選ぶのが良いです.線形代数と微積分については授業で教科書も配布されているはずなので,授業を理解するには教科書を参考にするのが一番だと思います.しかし,授業だけで重要事項すべてを扱えるわけではないので,やはり自分に合った参考書を一冊は持っておくことをお勧めします.また,本の記述が分かりにくかったり,定理の証明でめちゃくちゃメンドくさい議論をしていたりすることがあります.そういう場合は自分で証明を考えてみたり,あるいは他の本も見てみたりすると分かるようになるかもしれません.自分で証明を考えるときは,「用語の定義は何か,仮定は何か,示したい結論は何か,仮定と結論を論理式や数式で表すとどうなるか」をはじめに確認してから行うのが良いです.つまり,証明におけるスタート地点,ゴール地点,証明で使う道具の確認です.これらをせずにいきなり証明を考えようとしても,何を議論すべきなのかも分からない状態では議論のしようがありません.簡単な命題なら,この機械的な作業だけで証明が終わることがありますし,この作業を通じて自分の頭の中を整理することができ,論理的に考える良い訓練になると思います.






いかがだったでしょうか.大学1年生で習う数学は基礎として本当に大切なので,この記事が皆さんにとって少しでも役に立てたなら幸いです.




それでは今回はこの辺で.See you next time !

富岡





























2020年6月5日金曜日

水曜担当 自己紹介&研究紹介(1)

初めまして!
今年度のラーニングサポートで水曜前半を担当する修士1年の東です。

今回は自己紹介と研究紹介をさせていただきます!

私は慶應の物理学科を卒業し、今は大学院理工学研究科の物理学専修に属しています。
私の研究室は、統計物理学の理論研究を行なっています。私の具体的な研究テーマは次回で紹介することにして、今回は統計物理学の魅力についてお話ししたいと思います。


物理学というと、まず思い浮かべるのは、宇宙論や素粒子論などかも知れません。これらの分野は、相対性理論や量子力学を駆使し、宇宙の構造や宇宙の果て、物質の究極の構成単位を研究していく分野です。よく物理学の花形と言われるだけあって、非常に魅力的ですね。

しかし、統計物理学にも、宇宙論や素粒子論に劣らない独自の魅力があるんです!
統計物理学は、簡単に言うと、粒子がたくさん集まった系を研究する分野です。素粒子論とは真逆の方向性ですね。

粒子がたくさん集まった系?
なんでそんなもの研究する必要があるの?
面白いの?

と思われるかもしれませんが、魅力があると言える理由は主に二つあります(もっとあるかも知れませんが、修士1年の自分が思いつく範囲でご容赦ください)。

1つは、粒子がたくさん集まると、系の構成要素一つ一つを追いかけているだけでは思いもよらなかった現象が起こり得るからです。超伝導がいい例ですね。超伝導は、ある温度以下で電気抵抗が0となる現象です。超伝導の原理は、原子や電子(あるいはクォークなどの素粒子)を一個ずつ調べても決して分からないわけですね。
このように、構成要素が多数集まることで、少数のときには思いもよらなかった現象が起きるという事実は、統計物理学の面白さの一つなのではないでしょうか?

二つ目を話します。我々が普段目にしている物質は、アヴォガドロ数(約6×10²³)程度の原子や分子が集まってできています。
粒子が一つや二つなら、古典力学の運動方程式や、量子力学のシュレディンガー方程式を解くことで、挙動を予想できます。しかし、粒子が三つ集まった場合(三体問題)は、一般に解けないことが知られています(古典力学においては、ポアンカレによって数学的に証明されている!)。
厳密に解けなくても、粒子が少数のときは、連立方程式(運動方程式やシュレディンガー方程式)の近似解をコンピューターで計算できます。しかし、アヴォガドロ数オーダーの連立方程式は、計算量が膨大すぎて、どんなに高性能のコンピューターを用いても、近似解を求めることすら不可能なわけです。
しかし、粒子の数が膨大で、無限大とみなせる場合は、また話が違ってきます。なぜなら、平均値や分散といった量が意味を持ってくるからです。つまり、粒子数が無限大とみなせる場合は、力学に確率論や統計学を組み合わせることで、むしろ厳密な計算が可能となります。これが統計物理学の二つ目の魅力です!


少し長くなってしまいましたが、統計物理学の魅力が伝わったでしょうか?
関連したヨビノリ たくみの動画も、とても参考になるのでお勧めします!
https://www.youtube.com/watch?v=jTB-_bxv8ps
最後まで読んで頂きありがとうございます!

2020年6月1日月曜日

【自宅でできること】化学実験レポート作成に役立つ『化学書資料館』を利用しよう



こんにちは。
火曜担当修士1年の江口です。

ついに、春学期の授業が始まりましたね。オンラインでの授業ということで、なかなか勝手がわからない点もあるかと思います。


特に大変だと思われるのが、実験系の授業です。
やはり実験の授業というのは、自分の手を動かして測定して、データを取って、その結果をレポートにしてまとめる、というものだと思います。

しかし、春学期は実験もオンライン授業で実施されます。
自分の手を動かさないから、なんだか実感が湧かず、レポートを書くのも一苦労。
そんな人が少なからずいるかと思われます。

加えて、外出自粛・活動自粛で、図書館が閉鎖されていて、レポートの参考文献を探しに行くことが出来ない状況にある人がほとんどだと思います。

今回は、化学系の実験レポート作成に役立つ文献データベース、『化学書資料館』をオンラインで利用する方法について、二つの方法を紹介します。


【方法1】理工学メディアセンターHPからアクセスする
1. 理工学メディアセンターHP(https://www.lib.keio.ac.jp/scitech/)にアクセス、
 「おすすめデータベース」>「化学書資料館」をクリック



2. リモートアクセスサービスの画面へ飛ぶので、「サービスを利用開始」をクリック


3. 慶應IDの認証画面へ飛ぶので自分のIDとパスワードを入力、「OK」をクリック



4. 注意事項が出てくるので、内容を確認し「同意する」をクリック



5. 「化学書資料館」へのリンクが表示されるのでクリック

すると・・・


アクセス成功です!


【方法2】KOSMOS経由でアクセスする
1. KOSMOS(https://search.lib.keio.ac.jp/)にアクセスし、検索欄に「実験化学講座」と入力し検索する。



2. 画面上部、おすすめのデータベースという欄がでてくるのでそこにある「GO」ボタンをクリック

3. 【方法1】と同じように、リモートアクセスの認証画面へ飛びます。
 【方法1】の手順2~5と同じように操作すると、

これも同様に「化学書資料館」にアクセスできました。




このデータベースでは、『化学便覧』や『実験化学講座』といった文献がオンラインで閲覧できるため、大変便利です。



【使用例】
・化合物○○の物性(密度、融点など)が知りたい→化学便覧や化合物検索で調べる

・実験で使った装置、測定手法が知りたい→実験化学講座で調べる

文献値が欲しくて探し回ったけど、ソースのよくわからないサイトの数値しか見つからない・・・
そんな情報も、このデータベースに載っているかもしれません。

また、学生実験でやるような測定は確実に、『実験化学講座』で触れられています。
この本を引用すれば、チェックする先生もにっこりでしょう。



さらに、このサービスはkeio.jpのアカウントがあればいつでも利用できます。
実験レポートあるあるだと思うのですが、『実験化学講座』の紙の本を借りようと思ったけど、他の人に借りられてしまっていたという状況になることがあります。
返却期限を待っていてはレポートの提出期限が過ぎてしまう。どうしよう・・・

そんな時にも、「化学書資料館」は使えば、オンラインでその内容を閲覧することができます。便利ですね。


以上、化学実験レポート作成に役立つデータベース、「化学書資料館」の紹介でした。
ぜひ活用してみて下さい!

江口


2020年5月18日月曜日

自宅でできること(調べもの篇)

こんにちは。
火曜担当の江口です。

本日も前回に引き続き、自宅で、オンラインを使ってできることを紹介していきたいと思います。

今回は、「調べもの篇」ということで、聞いたことはあるけど詳しくは知らない単語・人名・地名などについて、詳しく知りたい!という場合に役立つサービスについて紹介します。

まずは以下のリンクにアクセスしてみてください。


【新型コロナウイルス感染症対策】

自宅学習・オンライン授業のためのリソースガイド

https://libguides.lib.keio.ac.jp/er-guide/students


現在の新型コロナウイルス感染の状況を鑑みて、メディアセンターでは、自宅でも学習できるような、オンラインリソースをまとめています。
まとめられているサービスの中には、期間限定で同時アクセス数制限が解除されているものもあり、非常に利用しやすくなっています。

この中の、「Japan Knowledge Lib」が、調べものをする際にとても便利です。

Japan Knowledge Libでは、日本大百科事典をはじめとする各種辞典、そして辞書での検索が可能です。検索をすると、このサイトに収録されているすべての辞書について、一括で検索をおこなってくれるので、それぞれの記述を比較・検討することもできます。

Google等の検索エンジンを使っても、同じように調べものはできますが、Japan Knowledge Lib上の情報の方が、辞典・辞書のソースが明らかだという点で、ある程度の信頼性がある情報を収集できるかと思います。

個人的に気になっているのが、このサイトに収録されている、「理化学英和辞典」と、「SPED理工系英和」ですね。
研究室に入ると、英語の論文を読む機会がかなりあります。英語論文を読むときにネックになるのが単語、特に難しい専門用語の意味になります。そして理工系の専門用語というものはなかなか普通の検索ではヒットしません。
ですが、上に挙げた理工系の英和辞典を使うと、比較的スムーズに専門用語の意味に辿りつけます。最近使い始めたのですが、なかなかに使い勝手が良いです。


以上、オンラインで使えるサービス、Japan Knowledge Libの紹介でした。
Google、Yahooといったよく使う検索エンジンだとなかなか見つからない!
そんな少し専門的な調べものにも特化したサービスです。
積極的に利用してみてください!

江口

2020年5月15日金曜日

【自己紹介】月曜日担当(建築系)

こんにちは!

本年度のラーニングサポートの院生スタッフをさせていただく修士2年の川本です。
今回は主に自己紹介として私の研究室での活動などについて簡単に説明したいと思います。

現在、私は開放環境科学専攻ダルコ・ラドヴィッチ研究室に所属しています。
専門は都市計画や建築意匠で、研究だけではなく建築設計にも取り組んでいる研究室です。
そこで、現在の研究室を選んだ理由、研究以外のおもな活動(コンペティションやワークショップ)について書きます。

研究室について

所属しているダルコ・ラドヴィッチ研究室の特徴として、『国際色豊かな活動』『自ら考えて実行する機会の多さ』が挙げられます。

まず、前者についてですが教授だけではなく研究室内には留学生を含む多くの外国人や個性豊かなメンバーがいるため普通に国内の大学で得られる経験+αのものがあるように感じています。研究室内での公用語も英語で、私自身、受験の時から英語が得意ということは全くなかったのですが意思疎通や建築のために用いる英語力というのは徐々に向上しているのかな、と思っています。

後者については私にとって「この研究室に行きたい!」と思う一番の決め手になったものです。建築系の研究室では学生が設計事務所の所員のような形で教授のプロジェクトを手伝うことで実学としての知識を身につけていくことが多いように感じるのですが(あくまで個人の主観です)、所属している研究室ではこのような協力しながら設計を進める時間と、各自で挑戦しながら力を蓄えられる時間のバランスが良いと感じています。どんどん外部の環境などでチャレンジしていくにはとても良い環境だと思います。

研究以外のおもな活動①(コンペティション)

特に建築の意匠系ではコンペティションに参加することで建築設計の提案力を学外の環境で切磋琢磨していく活動を行っています。研究室としては毎年、国際設計競技に参加しており私が学部4年生の時には中国、修士1年生の時にはイタリアのコンペティションに作品を提出しました。

先輩、後輩、留学生など多様性のあるチーム編成による活動の中で、自然と議論の方法やプレゼンテーション力を身につけていく良い経験であったと思います。

研究以外のおもな活動②(ワークショップ)

研究室では『ワークショップ』などにも参加しており、今回は私が学部4年生の頃にクロアチアに行った際の写真を少々見せたいと思います。








上の写真はイタリアのアンコーナからクロアチアのスプリトに向かうフェリーでの写真です。節約のためにフェリーを移動手段として選びましたがとても興味深い体験でした。








ワークショップはクロアチアのヴィス島とラストボ島という場所で行い、大勢の前で英語を用いてプレゼンテーションする機会がたくさんありました。








これは休みの日に行った、屋外シアターの写真です。
自分ひとりでは想像していなかった経験を積むことができるとても良い環境だと思いました。

今回は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

川本

2020年5月11日月曜日

木曜担当 自己紹介&研究紹介

こんにちは!
今年度から木曜日のラーニングサポートスタッフを担当させていただく修士2年の原と申します.
コロナウイルスの影響もあり,不安な日々をお過ごしでしょうが,逆に何かに集中できる時と捉え,前向きに日々を生きていきましょう!

さて,今回は私に関する自己紹介と研究の紹介を簡単にさせていただきます!

1. 自己紹介
私は,基礎理工学専攻,物理情報工学専修の修士2年です.
物理情報工学科は,幅広い専門分野を抱えるグローバルな学科です.
量子力学などの研究をしている学生もいれば,制御工学や機械学習を研究している学生もいます!
どの学科を選択すればよいか,お悩みの学部1年生の皆さんも,とりあえず物理情報工学科に入っておけば,自分のやりたいことに出会えるかもしれません(笑)

2. 研究について
私は,主に制御工学と機械学習に関する理論研究をしています!研究に関する詳細なお話は,話し出すと長くなるので,今回は簡単に今流行りの人工知能(AI)や機械学習,そして深層学習(ディープラーニング)のお話をさせていただこうかなと思います!
(注)私も専門家ではないので,間違ってる部分も多々あると思います.話半分程度に参考にしていただければ幸いです.

~人工知能(AI),機械学習,深層学習(ディープラーニング)について~
まず,簡単なイメージを図にしたものがこちらです.機械学習とはAIの一種で,深層学習とは機械学習の一手法だと捉えてくれれば大丈夫だと思います!
(1)人工知能(AI)について
皆さん,人工知能(Artificial Intelligence)という用語は最近よく耳にするのではないでしょうか.実は,AIの研究自体は実はかなり昔から結構行われているんです.今日のAIブームは後で少し触れさせていただく深層学習(ディープラーニング)の登場によるもので,AIの研究には栄枯盛衰の歴史があります.
そもそも,AIの定義とは何でしょうか.AI研究の第一人者である東京大学の松尾豊先生は「人工的につくられた人間のような知能,ないしはそれをつくる技術」と定義しています.すなわち,人間の知能をコンピュータで表現しようとする分野だと私は捉えています.では,昔のAI(古典的なAI)ができたこととは何だったのでしょうか.ここでは具体例として,「病院における,病気の陽性と陰性を判定するコンピュータシステム」を考えてみましょう.

古典的なAIでは,コンピュータにお医者さんが明確な判断基準を与えます.例えば,最低血圧が120以上かつ心拍数が90以上だと陽性だとか,お医者さんの経験と知識に基づいた陽性のための条件をコンピュータに与えます.イメージとしては,陽性か陰性かを判定するためのフローチャートを作るイメージです.もちろん,莫大な知識をフローチャート化するためには,コンピュータでif文やand,orを使って書く必要があります.普段からコンピュータに慣れ親しんでる学生さん達は,そんなものがAIなのって思うかも知れませんが,実はこれも広い意味でのAIなんです.だって,人間の知能をちゃんとコンピュータで表現してますもんね.ちなみにこの古典的なAIはエキスパートシステムとも呼ばれています.

(2)機械学習について
つぎは,機械学習についてです.先ほどまで話していた古典的AIだと,コンピュータに与えたい知識が増えていけばいくほど,コンピュータの容量がますます必要になってしまいますよね.あと,そもそも人間(いくらお医者さんと言っても)が定義したフローチャートって正しいのでしょうか.最低血圧が120以上という条件は正しいのでしょうか,本当は118以上かもしれません.このように,人間のルール作りには限界があるんですね.そこで,判断の基準(ルール)をデータを基にコンピュータに作ってもらおうというのが機械学習です.方法としては,陽性の患者さんと陰性の患者さんの血圧や心拍数など病気に関係しているであろう要因のデータを,コンピュータにあらかじめ与えます.すると,コンピュータは与えられた要因のデータを基に,「陽性になる条件は,最低血圧が116以上で心拍数が92以上である」とか基準(ルール)を自動で生成します.これにより,人間が行うより高精度な判断が可能になります.これが機械学習です.ちなみに,ここで説明した例は教師あり学習というものです.機械学習には,教師なし学習というものもありますので,気になったら自分でググってみてください!

(3)深層学習(ディープラーニング)について
最後に今大きな注目を集めている深層学習(ディープラーニング)について説明します.深層学習は,機械学習の手法の一つで,機械学習と同様に基準(ルール)をコンピュータが自動で生成します.では,何が機械学習より特化しているのでしょうか?それは,病気に関係しているであろう要因をコンピュータが自動で抽出してくれるところです.機械学習では,病気に関係している要因(血圧や心拍数など)を人間がコンピュータに与えていました.しかし,実際の病気の原因は人間が想定していなかった要因(例えば,血糖値とか)かもしれません.それに対し,深層学習では,与えられたデータを基にコンピュータがルールを自動で生成するだけでなく,どこの要因に注目すべきかを見つけ出してくれます.このように,深層学習では,今まで人間が選んでいた注目すべき要因(特徴量と呼ばれることが多いです)をコンピュータが抽出してくれます.これにより,人間が今まで気づかなかった新たな要因の発見につながる可能性もあります.これが今流行りの深層学習です.深層学習に関する説明記事はネットにいくらでも転がってるので,是非,いろいろ自分で勉強してみてください!

~最後に~
かなり,長い説明になってしまいました(笑)ところどころわかりにくい説明になってしまってすいません.「ここは間違ってるだろう!」とか意見ございましたら,木曜日にラーニングサポートまで来ていただき,お話ししましょう(笑)







2020年5月8日金曜日

自宅でできること(オンラインで英語多読)

こんにちは。
火曜担当 修士1年の江口です。

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
この時期、自宅で過ごす時間が普段より多くなり、ストレスが溜まっていたり、時間を持て余していたりする方もいらっしゃるかもしれません。

こういう時は、自宅にいる時間が多いことをプラスに捉え、何か新しいことにチャレンジすると良いかもしれません。
長期休暇のときに、「○○の資格の勉強をしよう!」とか、「プログラミングやろう!」みたいに決心するような感じです。

今回は、自宅でできる英語学習について紹介したいと思います。
まずは以下のリンクにアクセスしてみてください。


【新型コロナウイルス感染症対策】

自宅学習・オンライン授業のためのリソースガイド

https://libguides.lib.keio.ac.jp/er-guide/students


現在の新型コロナウイルス感染の状況を鑑みて、メディアセンターでは、自宅でも学習できるような、オンラインリソースをまとめています。
まとめられているサービスの中には、期間限定で同時アクセス数制限が解除されているものもあり、非常に利用しやすくなっています。


本日紹介したいのは、図の赤枠で示した、「多読書リスト」というものです。
ここにアクセスすると、オンラインで利用できる洋書が、出版社別、レベル別にまとめられています。本のジャンルは多岐にわたり、物語もあり、文化、歴史に関するものもあり、という感じで、読むと英語以外の勉強にもなりそうです。
さらに、本のチェックリストも用意されており、自分がどの本を読んだのかを管理することもできます。至れり尽くせりですね。
英語のみならず、外国語の学習において、「多読」をするということはある一定の効果があるようです。
この機会に英語を勉強したいという方、多読にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?


オンラインで英語学習ができるというのはほんの一例で、他にも、メディアセンターからは様々なサービスが提供されています。
私個人としては、学生のメリットは「学割」が使えて、様々なサービスが学生価格で利用できることが主だと思っていたフシがあったですが、今日の記事で紹介したようなサービスを利用できるというのも、非常に大きなメリットだと思うようになりました。
積極的に活用していきたいですね!

江口

2020年5月1日金曜日

2020年度 金曜担当 自己紹介

2020年度 ラーニングサポート 金曜担当自己紹介

皆さん、はじめまして!今年度理工学メディアセンターでラーニングサポート(金曜前半12:30-14:00担当)を務めさせていただきます、修士2年の島津です。これが自分の投稿第一号となります。

学生最後の年、自分がこれまで勉強してきたことを活かして皆さんのサポートを出来ればと思っています。
とは言っても、現在は慶應のキャンパス全体が閉鎖中で、メディアセンターに顔を出すのはもう少し先になりますが。。。

さて、最初の投稿として、今回は自己紹介を研究と混ぜて軽くお話しようと思います!

自分は学部生時代は物理情報工学科に所属していました。学科名から何をしているのか想像しにくいですが、多くの分野を学ぶことが出来る学科です。実際、名前の「物理」や「情報」に限らず化学や生物に関する研究をしている学生もいます。

その中でも、私は制御工学・深層学習・量子情報の分野で研究を行っています。特にそれらを融合するような研究をしています。なぜこんな3つも手を出しているのかにはワケがあるのですが、その前にこれらがどのような学問であるがをざっと説明します。


①制御工学(伝統の学問)
何十年も前から産業で大活躍している伝統的な学問であると思います。英語だとControl Engineeringです。ロボットや自動車を動かしたりする際に用いられる学問です。慶應だと機械工学科やシステムデザイン工学科で代表される学問ですね(物理情報工学科でもやってますよ!)。更に、制御工学は機械だけでなく、ヒトの筋肉や後述の量子情報分野にも応用されています。なんでもありですね。というのも、制御工学は数学(純粋数学寄りじゃない方の、行列や確率統計等の数学)を駆使する学問で、機械も人の筋肉の動きも最終的には数学を使って解析をするので、制御工学が応用できるのです。

②深層学習(現代のトレンド)
この言葉を聞いたことがある学生は多いと思います。AIだとか機械学習って、最近流行っていますよね。。。まさに現代の技術のトレンドです。深層学習はそういった人工知能の分野に入る学問です。大体イメージが沸くと思いますが、翻訳や顔の認識、金融の市場予測などなど応用の幅が大変広い学問です。過去のデータを集めて、そのデータを基に未来に何が起こるのかを予測したり、それに対してどう対応をすればよいかを決める際に用いられます。そして、深層学習はデータの解析に行列、確率等の数学を駆使する学問です。大学の授業で行う確率論に素養がある人にとって深層学習はかじりやすいのかなと思います。

③量子情報(未来のトレンド)
量子情報は量子力学と言われる学問の一種で、説明が難しい学問です。直感的に理解しにくい現象を扱うからです。量子力学の世界では、影分身のような魔法的な現象が起こります(影分身が適切な表現かどうか微妙ですね…)。そういった「魔法」をしっかり理論的に説明するための学問が量子力学です。そんなことできるの?と思うかもしれませんが、これまた確率・行列等の数学を駆使すると魔法の説明がある程度可能になります。そして、その魔法を使って、恐ろしく計算時間の早いコンピュータ(通称:量子コンピュータ)を実現しようといった学問が量子情報と呼ばれています。未来の計算技術の常識を変えるような学問です。


はい、長々と説明してしまいましたね…。では、ここからなぜ私がこれらを学んでいるのかを話します。勘がよい方は察しているかもしれませんが、これら3つには数学が共通しています。①~③の分野で理論的な解析を進めていくと、似たような数学的な手法を使うことになります。特に、行列と確率統計です。数学を通じて一見異なる3分野を融合させることが出来ること。これが研究の最大の魅力です。

自分は学部4年生の時に量子情報と制御工学を融合する学問(通称:量子制御)に出会い、現在は量子情報と深層学習を融合させる取り組みにフォーカスしています。

今日は自分の研究を例に自己紹介させていただきました!今年度はよろしくお願いいたします!

島津







2020年4月14日火曜日

火曜担当 研究室紹介

こんにちは。

今年度ラーニングサポート火曜担当となりました。
化学科修士1年の江口です。
質問受け付け時間は
毎週火曜日12:30~14:00
です。

化学Aをはじめとする、化学系の講義でなにか聞きたいことがあったら、ぜひいらしてください。
大学の化学は、高校化学とのギャップが大きく、びっくりしてしまう人も多いと思います。
わからない点、疑問点などがあったら、テスト直前までそのままにするのではなく、早め早めに解消してしまいましょう。
私たちも力になれるよう頑張ります。
もちろん、化学系以外の内容についてでも大歓迎です。


【研究室紹介】
それでは最初なので、簡単に私の所属する研究室について紹介しようと思います。
私は化学科の近藤研究室というところに所属しています。
近藤研は「表面化学研究室」とも呼ばれ、
「化学反応を調べるための新しい方法を開発して, そのメカニズムを理解する研究」
をおこなっています。
その中でも特に「触媒」の反応メカニズム理解を目標としています。


ところで、触媒とはどういうものなのでしょうか?
理系の皆さんなら触媒とはなにかご存知の方も多いと思います。
反応の前後で変化がなくて、活性化エネルギーを下げて、反応速度が上がるってやつですね。
具体的には、二酸化マンガンで過酸化水素が水素と酸素になるといった反応が有名だと思います。


しかし、触媒を入れるとなぜ活性化エネルギーが下がり、反応速度が上がるのでしょうか?
疑問に思ったことはありませんか?
実は、世の中に数多く存在する触媒は、そのほとんどがその活性化の理由、メカニズムが詳しくわかっていないのです。
その理由は、触媒反応が実際に起こる場所と関係してきます。


触媒反応は、触媒の「表面」に、分子がくっつくことで、反応が始まります。
反応は触媒の表面で起こるのです。
このため触媒の「表面」を観測すれば、触媒の反応メカニズムがわかるはずです。


しかしこの「表面」を観測するというのが非常に難しいのです。
化学反応を観測するときの「表面」とは、原子一層~数層レベルのスケールの話です。
このレベルですと、観測時の信号強度が弱く、そもそも観測すること自体が難しいうえ、表面に少しの汚れがあるだけで測定できなくなってしまいます。


このような問題から、触媒が実際に反応しているときの様子を測定・観察には非常な困難があるのです。
そして当研究室では、上記の課題を解決できるよう測定装置を開発・改良して、触媒が実際反応しているときの「表面」を観測しようと試みているのです。



いかがだったでしょうか。
「触媒反応」と「表面」との関係性について少しでもわかっていただけたら幸いです。


江口