2021年11月5日金曜日

金曜担当 自己紹介 冨田

 はじめまして、こんにちは! 今年度秋学期金曜の前半(12:30~14:00)を担当します応用化学科修士2年の冨田です。

化学A・Cや無機化学をはじめ物理化学やマテリアル科学に関する相談を中心に受け付けています。2019年8月から2021年3月にかけてスウェーデンのKTH(スウェーデン王立工科大学)という大学で勉強しており、ダブルディグリーや留学に関する相談も受け付けています。

専門分野は無機構造科学で現在は太陽電池に使われる半導体の合成の研究をしています。

今回は太陽電池の仕組みと無機化学の面白さについてお話ししようと思います。

太陽電池の仕組み

太陽電池にはシリコン太陽電池や色素増感太陽電池、さらには最近注目を浴びているペロブスカイト太陽電池などさまざまな種類があります。このような太陽電池に共通して言えるのは基本的に電荷分離、電荷輸送という現象が内部で起きているということです。物理や化学を勉強していないとなかなか理解するのが難しいですが、簡単なシリコン太陽電池を例にとって説明しようと思います。

シリコン太陽電池はp型半導体とn型半導体が接合した構造をとっています。ここでpやnというのはpositiveとnegativeの頭文字をとったもので、それぞれ正の電荷(ホール)、負の電荷(電子)を流します。これらの半導体を接合した部分をpn接合といい、接合面付近でホールと電子が結合することで電荷が消滅し空乏層が生まれます。

光というのはある程度のエネルギーを持っており、太陽電池ではこの光エネルギーを電荷分離に使います。空乏層中では内蔵電場が生じており、太陽光が照射することによって分離した電子とホールは、その内蔵電場によってそれぞれn型、p型半導体に移動します。そして、光が照射されている状態でn型、p型半導体を外部回路につなぐと電子が外部を流れて電流が発生する、といった仕組みなのです。

専門用語が多く理解するのが難しいと思われるかもしれませんが、エネルギー変換材料は勉強すればするほど奥が深くとても面白いです。応用化学科無機構造科学研究室では、太陽電池のみならず振動発電材料や熱電変換材料の研究テーマも扱っているので、機能性無機材料やエネルギー変換材料を合成して創り出すことに興味のある方は、是非ホームページを覗いたり実際に見学してみてはいかがでしょうか(宣伝)。

無機化学の面白さ

無機化学や固体化学の分野で研究をするためには、周期表とお友達になる必要があります。周期表というのはすべての元素を物理的、化学的な性質が似たもの同士が並ぶように決められた規則に従って配列した表のことです。

H He Li Be B C N O F Ne...

原子番号20のCa(カルシウム)までなら語呂合わせとともに覚えている方も多いのではないでしょうか。しかし、無機化学を研究するのであれば後半のランタノイドや第6周期も扱うことがあるため、周期表に書かれた元素の性質を幅広く理解する必要があります。

現在周期表にある元素は118種類あり全部を頭に入れるのはとても大変ですが、性質が似ているものは同じ列や行にあるのでそれらの性質を理解することが重要になります。例えば第17族のハロゲン元素は電子を1個受け取ると閉殻構造になるため一価の陰イオンになりやすく、第1族のアルカリ金属は電子を1個失って一価の陽イオンになりやすいという特徴があります。

周期表に慣れ親しんでおくと、実際の研究において材料の特性や性質を理解するのにも役立ちます。少々専門的な内容になりますが、例えばCaTiO₃(チタン酸カルシウム)という物質はペロブスカイト型の結晶構造をとる典型的な物質で、その構造の歪みを利用し希土類イオンを少量添加することで蛍光体などへの応用が期待されています。Caは第2族アルカリ土類金属第4周期の元素ですが、第5周期のSr(ストロンチウム)や第6周期のBa(バリウム)に置き換えたSrTiO₃(チタン酸ストロンチウム)やBaTiO₃(チタン酸バリウム)もCaTiO₃と同じくペロブスカイト型の結晶構造をとり、主に熱電変換材料や誘電体材料として応用されています。

さらにこれらの物質のうち、第4族第4周期のTi(チタン)を第5周期のZr(ジルコニウム)に置き換えた物質も存在するので、周期表を眺めながら様々な材料を探索したり、新たに作り出したりすることができるのです。


少々難しい内容かもしれませんが、無機化学の分野での研究に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

冨田

2021年11月2日火曜日

学部時代最大の壁?実験レポートの乗り越え方について

 こんにちは、木曜ラーサポ担当の大島です!


 この記事では、理工学部生が多かれ少なかれ苦しむであろう実験レポートの乗り越え方について紹介していこうと思います。


 いきなりですが、このブログを読んでいる人は実験レポートにどんな印象があるでしょう? 


「過去レポがあれば問題ないんじゃないの」

「まとめなくちゃいけないことが多すぎて混乱する」

「考察に何を書けばいいかわからない」

「量が多い」

「ずっと過去レポで乗り切ってきた」

「参考文献は何を見ればいいのか」

「授業との両立ができない」

「何でもいいのでとりあえず過去レポください……」


 大体こんな感じではないでしょうか。ただでさえ実験は時間もかかって疲れるのに、ここにさらにレポートが加わるわけですから大変ですよね。私も学部時代にかなり苦労しました。(何度、朝刊配達のバイク音を聞いたことやら……)

 しかも最近は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、実験も大部分がオンラインになったと聞きます。対面に比べてさらに学びにくい環境ですので、その負担は非常に大きいと思います。ただ、学生実験は多様な分野にわたっているので、一つ一つについて説明することは難しいです。そこで本記事では、私の過去の体験を踏まえて、

「実験レポートをできるだけ効率的に進める方法」

に絞って紹介していきたいと思います!


 ※ここで掲載する情報は、コロナ禍以前の話を元にしているので、現在と異なる点があることを念頭に置いてください。


 まず初めに:過去レポについて

 過去レポがあればいいんじゃないの、と考える人はいると思います。間違ってはいないです。考察のきっかけを掴みたい、どれぐらい書けばいいのか目安が知りたいという時には参考になります。でも、そればかりに頼るのはやめたほうがいいですし、丸写しは問題外です。剽窃は絶対にやってはいけないことであり、さらに言うと、採点側は長年多くのレポートをチェックしてきた百戦錬磨の人なので必ずバレます。過去レポはあくまで参考程度にしておきましょう。



 コツ1:緒言と実験方法は実験前/直後に終わらせる!

 実験レポートで一番労力を使うのは結果と考察であり、採点に関わる項目もここです。裏を返すと、ここにかける時間が増えれば増えるほど、当然レポートの点も上がるというわけです。なので、緒言と実験方法はできるだけ早めに書き終えて、結果と考察に入りましょう。緒言の内容は実験書、実験方法も同じく実験書と実験ノートから書くことができます。当日実験書にないことをしたら、後から書き足すだけです。



 コツ2:参考文献は先に借りるべき

 結構あるのが、「参考文献として紹介された本を借りに行ったら、もう借りられていた!!」という展開です。別の文献やオンラインの論文を探すのは余計な手間暇がかかります。なので資料は、次のテーマの実験日の直前に借りておくと安心です(あまり早くても、別の実験班がその実験をやっているので、やはり資料が借りられている可能性があります。実験が切り替わるタイミングでメディアセンターに行くのがベストでしょう)

 また、メディアセンターでは貸出中の資料を予約することもできます。目当ての資料が人気でしたら、あらかじめ予約で押さえておけば、返された瞬間に別の人に一歩早く借りられてしまった……という悲しい事態も回避することができます。積極的に使っていきましょう。

KOSMOSのページはこちら



 コツ3:結果を書く時はショートカットとテンプレートで高速化すべし

 結果のデータをまとめるのは何気に大変です。「2時間くらいでできるかな~」と呑気に構えていたら、細かいところが気になってあれこれ修正しているうちに気付けば4時間……なんてこともよくある話(細部に拘りすぎる傾向がある私の性格は、一旦棚上げしときます)。しかしここは考察に使うデータを整理するところ。できるだけ簡潔に、そして早く終わらせたほうがいいです。でないと考察に入れない。

 というわけで、まず初めにOfficeのショートカットキーをどんどん覚えて使いましょう。Ctrl+C,Vは基本中の基本。ここに下付き、上付き、全選択、置換、前の動作の繰り返し……etc と、挙げ始めればキリがないですが、全部は紹介しません。今、皆さんがこのブログを読んでいるパソコンなりスマホなりで「Word ショートカット」と検索すれば全部出てきます。Excelも同じです。これを使うだけでかなり作業効率が上がるので、覚えておいて損は絶対にないです。最初は大変ですが、がんばりましょう!

 次にExcelグラフのテンプレートを作りましょう。これも同じく検索すればいくらでもやり方が出てきます。通常の近似曲線つきのグラフ、対数用のグラフを作っておくだけでもかなり負担が違います。あとはデータを取ってExcelの所定の位置にコピーするだけ。一瞬でグラフの完成です。



 ……というわけで、ここまで実験レポートを効率よく終わらせるコツをお伝えしてきました。もう知っている/実践しているという人はそれでいいですが、こう思った人もいるのではないでしょうか。


 最初からそんなにできるわけがない


 その通りです(←!?) 最初からこの3つのコツを完璧にこなせるなら、そもそもレポートに苦労しません。大事なことは少しづつ習慣づけて、スピードアップしていくことです。初めは中々できなくて苦労するかもしれませんが、そこで諦めずに踏ん張ってみましょう。まずは自分ができる範囲から、例えば参考資料を事前に借りて緒言を書くところから始めていくのはどうでしょうか。


 実験と座学の両立は難しいと思います。ですが、ここでしっかりと知識と技術を身に着けていくことで、将来研究室に入ったときにきっと役立つはずです。


 この記事を読んで、少しでも役に立ったと感じていただければ幸いです。



 大島