はじめまして、こんにちは! 今年度秋学期金曜の前半(12:30~14:00)を担当します応用化学科修士2年の冨田です。
化学A・Cや無機化学をはじめ物理化学やマテリアル科学に関する相談を中心に受け付けています。2019年8月から2021年3月にかけてスウェーデンのKTH(スウェーデン王立工科大学)という大学で勉強しており、ダブルディグリーや留学に関する相談も受け付けています。
専門分野は無機構造科学で現在は太陽電池に使われる半導体の合成の研究をしています。
今回は太陽電池の仕組みと無機化学の面白さについてお話ししようと思います。
太陽電池の仕組み
太陽電池にはシリコン太陽電池や色素増感太陽電池、さらには最近注目を浴びているペロブスカイト太陽電池などさまざまな種類があります。このような太陽電池に共通して言えるのは基本的に電荷分離、電荷輸送という現象が内部で起きているということです。物理や化学を勉強していないとなかなか理解するのが難しいですが、簡単なシリコン太陽電池を例にとって説明しようと思います。
シリコン太陽電池はp型半導体とn型半導体が接合した構造をとっています。ここでpやnというのはpositiveとnegativeの頭文字をとったもので、それぞれ正の電荷(ホール)、負の電荷(電子)を流します。これらの半導体を接合した部分をpn接合といい、接合面付近でホールと電子が結合することで電荷が消滅し空乏層が生まれます。
光というのはある程度のエネルギーを持っており、太陽電池ではこの光エネルギーを電荷分離に使います。空乏層中では内蔵電場が生じており、太陽光が照射することによって分離した電子とホールは、その内蔵電場によってそれぞれn型、p型半導体に移動します。そして、光が照射されている状態でn型、p型半導体を外部回路につなぐと電子が外部を流れて電流が発生する、といった仕組みなのです。
専門用語が多く理解するのが難しいと思われるかもしれませんが、エネルギー変換材料は勉強すればするほど奥が深くとても面白いです。応用化学科無機構造科学研究室では、太陽電池のみならず振動発電材料や熱電変換材料の研究テーマも扱っているので、機能性無機材料やエネルギー変換材料を合成して創り出すことに興味のある方は、是非ホームページを覗いたり実際に見学してみてはいかがでしょうか(宣伝)。
無機化学の面白さ
無機化学や固体化学の分野で研究をするためには、周期表とお友達になる必要があります。周期表というのはすべての元素を物理的、化学的な性質が似たもの同士が並ぶように決められた規則に従って配列した表のことです。
H He Li Be B C N O F Ne...
原子番号20のCa(カルシウム)までなら語呂合わせとともに覚えている方も多いのではないでしょうか。しかし、無機化学を研究するのであれば後半のランタノイドや第6周期も扱うことがあるため、周期表に書かれた元素の性質を幅広く理解する必要があります。
現在周期表にある元素は118種類あり全部を頭に入れるのはとても大変ですが、性質が似ているものは同じ列や行にあるのでそれらの性質を理解することが重要になります。例えば第17族のハロゲン元素は電子を1個受け取ると閉殻構造になるため一価の陰イオンになりやすく、第1族のアルカリ金属は電子を1個失って一価の陽イオンになりやすいという特徴があります。
周期表に慣れ親しんでおくと、実際の研究において材料の特性や性質を理解するのにも役立ちます。少々専門的な内容になりますが、例えばCaTiO₃(チタン酸カルシウム)という物質はペロブスカイト型の結晶構造をとる典型的な物質で、その構造の歪みを利用し希土類イオンを少量添加することで蛍光体などへの応用が期待されています。Caは第2族アルカリ土類金属第4周期の元素ですが、第5周期のSr(ストロンチウム)や第6周期のBa(バリウム)に置き換えたSrTiO₃(チタン酸ストロンチウム)やBaTiO₃(チタン酸バリウム)もCaTiO₃と同じくペロブスカイト型の結晶構造をとり、主に熱電変換材料や誘電体材料として応用されています。
さらにこれらの物質のうち、第4族第4周期のTi(チタン)を第5周期のZr(ジルコニウム)に置き換えた物質も存在するので、周期表を眺めながら様々な材料を探索したり、新たに作り出したりすることができるのです。
少々難しい内容かもしれませんが、無機化学の分野での研究に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
冨田
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