2018年12月20日木曜日

海外学会発表体験記

こんにちは。ラーニングサポート木曜日担当の櫻井です。

今回は海外での学会発表について紹介させていただきます。
12月5日から8日に香港大学で開催されたThe 19th Asia Pacific Industrial Engineering And Management Systems (APIEMS 2018)に行ってきました。

香港は狭い島でありながら山が海岸近くまで迫っており、住む場所が狭いためか非常に高いビルが乱立していました。


イギリス領時代の名残かバスも二階建てで、車道も左側通行でした。

香港は世界有数の金融センターであり、世界中の金融機関が集まっている姿は圧巻でした。またセブンイレブンがいたるところにあったことには驚きました。

学会は経営工学(慶應では管理工学)に関するもので、マーケティング、データ分析、機械学習、ロジスティクス、都市工学、そして私の専門の金融工学など様々な話題の発表がありました。

発表当日はとても緊張しました。数週間前から練習をした成果が出たのか大きな失敗こそありませんでしたが、緊張のため早口になってしまい持ち時間が余ってしまいました。時間オーバーになるよりはましですがとても残念です。人前で話す経験がまだまだ足りないと思い知らされました。

雨などの悪天候による日常的な渋滞が社会問題になっている東南アジアから来た学生が、渋滞発生場所をビッグデータから予測するモデルを発表していました。普通の雨程度では大きな混乱が起きない日本からするとなかなか思いつかないテーマだと思います。国によって抱えている問題は様々であり、経営工学やデータ分析で解決できる問題が世界にはたくさんあるのだと改めて感じました。

理工学部では多くの研究室が海外の学会に参加しています。自分の研究の報告だけではなく様々な事を学べるのでオススメです。

2018年12月14日金曜日

LaTeXのすゝめ

こんにちは。

奥村です。


突然ですが、皆さん、LaTeX(僕は「ラテフ」と読んでいます→https://ja.wikipedia.org/wiki/LaTeX)って知っていますか?
知ってるよーって人にとっては今回の記事は全くつまらないと思います。

LaTeXとは何か、簡単に言ってしまうと文書を書くためのソフトウェア(のようなもの)ですね。
私がLaTeXを知ったのは、理工学部1年必修の情報学基礎の講義の時です。2回目か3回目くらいの講義の時にちょろっと触れられていました。
そこで興味が出た私はLaTeXについて調べ、実際に使い、学部1年生の時からずっと実験レポートをLaTeXで書いています。

ただ私の周りではLaTeXを使っている人がいなくて寂しい思いをしております。
「理系ならLaTeXでしょ!」みたいな意見をインターネットでは見るのですが、どうやら今ではそうではないらしいです。インターネットは参考になりませんね。まあ私のいる分野が化学なのでというのが一番の理由でしょう。(後述しますがLaTeXと化学はあまり相性が良くありません。)
そんな感じで周りにLaTeXについて話せる友達がいない私は、もっとLaTeXについて知ってもらおう(せめて名前だけでも)、と思い、今回の記事を書いております。

1.LaTeXについて
LaTeXはMicrosoft® Office Word(以下Word)とは大きく違います。

一番の違いが、GUIかCUIか、という所ではないでしょうか。
例えばある文字列を太字にしたい、といった場合、Wordではその文字列を選択して太字にするボタンを押しますが、LaTeXでは太字にするコマンドを挿入します。Webサイトでいうソースの様なものを書いて、コンパイルすることで文書が出力されます。

また、これも大きな違いですがLaTeXは無料で利用できます。WordはMicrosoft社から有料でソフトウェアを購入する必要があります。慶應の学生ですと無料で使えるライセンスもありますが、購入する場合は安くない値段がしますよね。

ただ、先述しました通りLaTeXはCUIなので、慣れていないユーザーにはとっつきにくいと思います。

2.LaTeXの特徴
ではなぜわざわざLaTeXで書くのか?

文書がきれいに作れます。特に数式関連に強いです。数学や物理の教科書はLaTeXで書かれたものが多いのではないかと思います。
複雑な数式の入力はWordよりもやりやすいみたいです。(ただこれは昔の話で、今ではWordでもやりやすくなってるそうです。)
化学式や化合物の構造の入力もできるにはできますが、向いてないと思います。私は画像にしてから貼り付けてやっています。数式を数学や物理の分野ほど多用しない化学の分野ではあまりありがたみは無いかもしれないですね。

英語の文章でもハイフネーションやカーニング、リガチャなどすべて自動でいい感じにやってくれます。
日本語ですとそんなに凝った設定はありませんが、まあまあきれいにできると思います。

図や表を入れる位置は自動でプログラムが判断し、”いい感じの位置”に決めてくれます。
書いている人はレイアウトを気にすることなく、(Wikipediaの記事を編集するときのように)文章の内容や論理構造だけ気にすればいいという事です。
図番号、式番号、ページ数や相互参照の数字も勝手に振ってくれるので、番号の数字そのものを気にする必要はありません。

しかし文書の設定(フォントや文字サイズ、余白など)はLaTeXでは分かりにくいかもしれません。コマンドで打つので自分の思うようにレイアウトが整わないことも少なくありません。そういう時はどのコマンドの使い方が良くないのか調べることになります。
まあ、Wordでも思った通りにならないことはよくありますよね。”何もしていないのに”勝手にフォントが変わったり謎なところに線が入ったりして困った経験のある人は多いのではないでしょうか。Wordの設定項目は多岐にわたるため原因を見つけるのが難しいですが、LaTeXはわりとシンプルなのでどこが悪さをしているのか特定しやすいと思います。

私の場合LaTeXを使うのは面白いから、というのもあると思います。最近はLaTeXを使ってプレゼンテーションのスライドや、ポスターを作ってみたりするのを始めてみました。
それほど文書の見た目を気にせずに書いても、きれいな文書が自動で出来上がってくるので楽しいものです。


今回の記事ではLaTeXについてごく簡単にご紹介いたしました。
興味のある人はインターネットで調べてみてください。十分な量の情報が見つかると思います。

それでは。

奥村

2018年12月4日火曜日

日々の生活をChemvenientに #2 ~半分焼けばおいしさ2倍~

こんにちは、金曜化学担当の菅野です。

化学の力(chem)を使って普段の生活をもっと便利(convenient)に、つまり
日々の生活をChemvenientに
できるような知恵を紹介しています。第一弾はこちらです。
第二弾は、「半分焼けばおいしさ2倍!」です。
肉じゃがをはじめとしたお肉料理がおいしくなる、Chemvenientです。

焼いて煮る?そのまま煮る?

肉じゃがは筆者の大好物です。安いし、食材も多いし、見た目もきれいで、つくるのも簡単。日本が誇る家庭料理ですよね。どこのお店でも売っているから、手軽にたべることができます。でもやっぱり、自分でおいしいのを作れたらよいですよね。

肉じゃが

みなさんはどうやって作ってますか?お肉と野菜を炒めて、煮込む。おそらくこれがメジャーな手法だと思います。また、あるTV番組では、炒めることなく、全ての食材を一度に鍋に放り込み、ひたすら煮込むという”肉じゃが鍋”の手法が紹介されていました(詳細はこちら)。
筆者は、お肉を半面だけ焼いてから煮込むようにしています。こうすることで、いつもの作り方よりも2倍は美味しくなります。半分なのに2倍、一見すると相反しているようですが、どうして「お肉を半面焼けば、おいしさは2倍」なのでしょうか。
ここに化学の力が隠されているのです。


「お肉を焼く」の化学

そもそも本当においしい食材なのであれば、そのまま嚙りつくほうがいい。料理とは、食材のもっている本来の味以上のものをひきだすことである
このように述べたのは、料理評論家の服部幸應(はっとりゆきお)先生です(注1)。まさにその通りで、お肉を炒めることは、お肉が持ってない新しい美味しさを創造する効果がありますなぜならば、お肉を高温で炒めることでお肉の表面で化学反応が起こり、おいしい成分が新たに生まれるからです(メイラード反応といいます)。焼肉の香ばしい香りがいい例です。これは、煮込むだけでは決して生まれないおいしさです。
また、お肉を炒めることで肉表面を固め、うまみ成分がお肉の外に流出するのを防止できます。ハンバーグがいい例です。噛むと、肉汁がジュワっと出てきますよね。


お肉を焼く効果

一方で、鍋料理ではお肉を炒めることなく、最初から最後まで煮ます。炒めずに煮ると、味が良くしみるだけでなく、肉汁が溶け出してスープがおいしくなります鍋がよい例です。スープが格段においしくなりますよね。


お肉を煮る効果

では、お肉の半面だけを焼き、それを煮込んだらどうなるでしょうか。焼くことであたらしいおいしさ成分が生まれ、なおかつ肉汁の流出が半減されるため肉が美味しく、それでいて肉汁の一部は溶け出すためにスープもおいしく、そして味がよくしみる。まさに、焼くと煮るのよいとこどり!であり、普段よりも2倍オイシイ裏ワザなのです。


焼くと煮るの良いとこどり

今日のChemvenient: 半分焼けばおいしさ2倍

第二回のChemvenientはいかがでしたでしょうか。普段何気なくやっている調理には、多くの化学が隠されています。肉じゃがに限らず、”焼く”と”煮る”を使いこなし、何倍にも美味しい料理に挑戦してみてください。
ちなみに筆者は、お肉を食べるなら炭火焼きが一番好きです。香りも火の通りも段違いです。炭火焼きには独特の化学があります。ぜひ調べてみてください。

参考文献
1.  服部幸應 (2012) 『おいしい料理の方程式』 河出書房新社.