2017年1月13日金曜日

半導体と写真

水曜日担当の木我です。

半導体と写真。
この2ワードに実は深い関係があることをご存知ですか。

私は今、半導体シリコンを研究していますが、そこで用いるリソグラフィーという技術が写真にとても似ているのです。
リソグラフィーで露光・現像すると緻密な像が現れてくる瞬間の何とも言えないおもしろさが、写真部員時代に楽しんだ暗室作業のそれと全く同じです。

半導体の製造は写真技術の超ハイテク版です。
ここでいう写真技術というのは、光を取り込んでフィルムに焼き付ける"銀塩写真"のことです。

銀塩写真とは、銀化合物に光を当てると化学変化を起こし黒ずむ性質を利用し、
さらに暗箱とレンズとを組み合わせて写真を撮る方法です。
デジタルカメラが主流になるまでに我々が使っていたフィルムカメラの原理がこれです。
この発明は人類にとって革命的でした。19世紀中ごろの事でした。
古今東西「景色を絵に描いて残す」ことに取り組んでいたことを考えると、この魔法の様な道具の発明はつい最近の事なのです。

当時見たものを"そのまま"写し取る写真技術の発明は、
芸術の世界にも大きな影響を及ぼしたと言われています。
見たものを写し取る技術としての画家の目と腕はカメラに取って代わられ、
更に、カメラで"瞬間を切り取る"ことの面白さは印象派画家の表現にも影響したと言われています。

こうして景色を写し取る技術として発明された写真は、
現代では半導体素子を現実に作りこむ技術に応用されています。
1947年に米ベル研究所バーディーン、ブラッテンらによって、点接触型として発明されたトランジスタは、1959年になるとフェアチャイルド・カメラ社(フェアチャイルド・セミコンダクター社への出資会社)のハーニーによってプレーナー型に改良されました。これが、現在も続く、写真技術を用いた半導体素子の大量生産の始まりです。

現像した後のネガを眺めた時に、驚くほど細かい像が残っているのを
見たことがある人もいると思います。
カメラのフィルムにあたる部分を半導体シリコンに置き換え、そこに設計した回路パターンを
"光"や"電子"を使って当ててやると極々微細な回路が大量に焼きこめます。

皆さんがこの記事を読むときに使っている、スマホやPCのチップも、皆このように作られた半導体です。
半導体はすごいですが、実はそれは写真抜きに語れないのです。


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