2016年6月30日木曜日

アメリカへの学位留学について―第2回 留学の意味― (山田)(連載)

こんにちは。OBスタッフの山田です。
アメリカへの学位留学について―第2回 は「留学の意味」です。


私が留学先にアメリカを選んだ理由は、アメリカの大学のシステムとその特徴にあります。

まず始めに
アメリカの名門大学は?と聞かれたら皆さんは何と答えるでしょうか。
ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学
このあたりは直ぐに出てきそうです。
ではこの中で一番良い大学は?と聞かれたら?

日本の大学だと話は簡単に思います。
ほぼ全員が、東大が一番、二番は京大。
三番は阪大?東工大?一橋?もしくは慶應?
こんな感じだと思います。
これがどの分野でもあまり変化が無いのが日本の大学の特徴だと思います。

一方アメリカはどうでしょうか。

こういったランキングがどの程度の意味を持つのかは私も懐疑的ですが、最も権威があるとされているランキングであるTimes Higher Education (THE)World University Rankingではトップ50校のうち、26校がアメリカの大学です。(因みに日本は東大:43 1校のみ)1
それらの大学の順位が分野によって異なることは普通のコトです。
先ほど挙げたアメリカの大学三校も、分野によって全く順位が異なります。さらに言えば、特定の分野において、あまり有名ではない大学が上記の三校を上回るといったこともあり得ます。

アメリカは世界一の留学大国であり、世界中から学生が集まってきます。参考までに、ミシガン大学の電気工学科の2015年の修士・博士課程入学者のうち74 %は留学生です。2 ミシガン大学は州立大学であることを考えると、日本の感覚では異常としか思えないでしょう。

このようにアメリカ全土に広がっている一流大学が、それぞれ世界中から優秀な学生を集め、大学内外で競争に晒されているという環境は、実力を付けるには最高の環境ではないでしょうか。
さらに卒業後の進路の選択肢を世界中に広げることができることは魅力的です。

しかし、いくら環境が良いと言っても先立つものが無ければとても留学など出来ません。アメリカの大学の学費は非常に高額です。
:ハーバード大学の大学院The School of Arts and Sciences2015-2016年の学費341,832$

私立だから高いんでしょう?と思うかもしれません。アメリカには国立大学は軍関係しかなく、日本で言う国立大学は州立大学にあたるのですが、確かに州立大学の学費は安い傾向にあります。
しかし、アメリカの州立大学は州内居住者と非居住者で学費が違う事が多く、例えばミシガン大学(学費が高額なことで有名ではありますが)の大学院の学費3は次の様になっています。
州内居住者:23,504$
州外居住者:44,216$
なお、州内居住者として扱われる為には、両親が州内に居住し税金を納めている、といった条件があります。よって留学生は州外居住者の学費を払う事になります。

もちろん学費が安い大学も数多くあるのですが、一般的にレベルの高い大学は学費も高くなる傾向があります。さらにアメリカの大学の学費は年々数%ずつ増加しています。

アメリカの大学院では、博士課程が独立して存在している事はほとんどなく、博士号取得を目的とする場合は一般的に修士博士一貫コースに在籍することになります。
学部を卒業してから直ぐに進学することも可能ですが、私の様に修士号を持っている場合でも修士課程を含んだ一貫コースを修める必要があります。
また、アメリカでは日本の様に修業年数に決まりがないので、修士博士合わせて6~7年かかることも珍しくありません。

では、先ほど挙げた様な高額な学費を6~7年間も払わなければいけないということは、お金持ち以外はアメリカでは大学院に行けないのか、というと話は異なります。ここが重要なのですが、アメリカで学術系の博士課程に在籍している学生のほとんどは、何かしらの財政支援を受けており、学費+生活費(2,000$)が支払われるのが一般的です。
これは以下の様な市場原理が働いていることによります。

教授は研究費として産・官・軍から研究費を集めます。
そしてそのお金を設備、物品購入だけではなく、大学院生の給料として支払います。
大学院生は研究成果を出し、教授は研究費を出してくれているスポンサーに成果として報告することが出来ます。
これらが上手に循環することで、大学院生は経済的に自立しながら学位取得を目指し、大学は優秀な学生を獲得し、スポンサーは研究成果を得ることができるということです。
これはResearch Assistantship (RA)と呼ばれています。

他にもTeaching Assistantship (TA)もあり、こちらは日本と同様、学部生の授業のオフィスアワーや採点等を担当することで同様の援助が得られます。資金源は学科や大学が一般的です。

さらにアメリカの大学ではScholarshipFellowshipと呼ばれる給付型の奨学金も充実しています。
奨学金の資金源としては大金持ちの卒業生による寄付(Endowment)も多く見られ、Fellowshipに寄付をした個人名が付く(○○ Fellowshipなど)こともしばしばあります。

こういった豊富な財政支援が世界中から留学生が集まってくる要因ともなっています。


次回からはアメリカの大学院入試について紹介します。
山田



2016年6月28日火曜日

アメリカへの学位留学について―第1回 留学について― (山田)(連載)

皆さんこんにちは。
昨年度スタッフとして勤務させていただいた山田です。

私はこの春、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程を修了し、秋からUniversity of Michigan Ann ArborApplied Physics Program博士課程へ進学します。
そこでメディアセンターの方からご依頼があり、留学についての記事(主にアメリカ)を何度か書かせていただくことになりました。

今回は第1回目なので、留学について大まかに述べたいと思います。


まずはじめに、皆さんは留学と聞くとどういったことを想像するでしょうか。

おそらく
1. (外国)語力が必要(or (外国)語を勉強しに行く)
2. 莫大なお金がかかる
というのが多いのではないでしょうか。

一般的に留学は以下の3つに分類されます。
・語学留学
・交換留学
・学位留学
上から順に人数が多いと考えてしまって良いでしょう。

語学留学とは文字通り、外国語を学びに行くもので、大学のエクステンションや語学学校に所属することになります。

交換留学は主に所属大学のプログラムに組み込まれており、留学先で取得した単位が振りかえられる等の制度があることが一般的です。

学位留学というのは、正規の学生として海外の大学に在籍し、学位(学士、修士、博士、専門職学位: ex. MBA, M.D. (=Medical Doctor) など)を取得することを目的としたものです。

この学位留学にこそ最大のメリットがあると私は考えているのですが、日本人がこの選択肢を選ぶことは非常に稀であるどころか、選択肢に挙がることすら無いことがほとんどであると思います。
そして学位留学には、先ほど挙げた"莫大なお金がかかる"というのも必ずしも当てはまりません。

私の留学も学位留学であり、Ph.D. (Doctor of Philosophy : 直訳すると哲学博士 欧米の大学院では学術系の博士号は全てPh.D.と呼ばれる)を取得することを目的としたものです。
これから数回にわたって学位留学のメリットやアメリカ大学院への入試について紹介したいと思います。

そしてこの記事が、これから進路を吟味するにあたって留学、特に学位留学を選択肢に加える為の役に立てば幸いです。




~雑談~アメリカにおける学位と平均初任給の関係
アメリカは超学歴社会であり、取得学位と平均年収には露骨な程の差があります。
例えばこちらを見てもらえると一目瞭然です。
物理学の学位(学士、修士、博士)を取得した人たちの一年目の年収は、
科学技術(STEM)分野外で働いている学士    2~5万ドル
STEM分野で働いている学士                       4~6.5万ドル
修士号取得者                                                 5.5~7.5万ドル
博士号取得者                                                 8~11万ドル
となっております。
更に言うとトップスクールの卒業生であれば、より高額になる傾向もあるそうです。
日本では学士と修士に幾らかの差は見られますが、修士と博士にはあまり差がないように思われます。

世界中から競争の激しいアメリカの大学院へ進学するモチベーションはこういったところからも来ているのかもしれません


山田

2016年6月9日木曜日

スイスETH工科大学での長期滞在(連載)


こんにちは。

数理科学科修士2年の小池です。
今年から学生スタッフを務めさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いします。

私は、2015年9月から2016年2月の間、スイスのチューリッヒ工科大学(ETHZ)に長期滞在させて頂いておりました。
(右はETHから眺めるチューリッヒの街並みです)

ETHZは、The Times Higher Education(イギリスの高等教育情報誌)の世界大学ランキング2016年で9位に位置する、非常に評価の高い大学です。
自然科学や工学を対象とした工科大学であり、レントゲンやアインシュタインなどの著名な卒業生を多数輩出しています。

スイスは、観光国としても非常に魅力的で、一度街を離れれば、アルプスの少女ハイジで皆さんが連想するのどかな田舎の風景が広がっています。
また、スイス国土の7割は山であり、マッターホルンやユングフラウ、モンブランなど名峰と呼ばれる山々が連なっています。
(下は私がスイスに滞在していた時に撮った牧場の風景と、グリンデルヴァルトに観光に行った時に撮った山の写真です)





理工学部の皆さんの中には、ETHZへの滞在や留学を志す方もいらっしゃるかと思います。
その際に注意しておくべきこととして、以下の点について連載でお話していきます。


(1)スイスの食生活と物価水準・・・今回の記事
(2)スイスの交通機関と水事情
(3)滞在許可証(Residence Permit)の取得について
(4)海外での研究について


なお、私は正規の留学ではなく、訪問学生としての滞在でしたので、履修等のプロセスには関わりませんでした。


(1)スイスの食生活と物価水準

スイスは世界一物価の高い国として知られています。
世界の物価の高さを計る指標に、ビッグマック指数と呼ばれるものがあります。
これは、世界各国でのマクドナルドのビッグマックの価格をもとに物価水準の比較を行う指標で、世界のイギリスの経済専門誌「エコノミスト」にて毎年報告されています。
スイスはこのビッグマック指数で、毎年1位を獲得しています。
スイスでは、ビッグマックの価格はおよそ700-800円で、日本の二倍以上となります。
私がスイスにいた頃も、身の回りのものの価格はおおよそ日本の二倍程度でした。


特に、食費はスイスで生活していく上で非常に大きな問題となります。
スイスでは、外食に高いコストがかかります。
スイスでマクドナルドに行った際は、毎回1500円ほど払っていましたし、学食も1000円は覚悟しなければいけません。
これは、スイスの人件費の高さが影響しています。
スイスでは、マクドナルドの時給が2000円を超えるそうです。

従って、スイスに滞在する場合は、基本的に自炊を行うのがベストとなります。
幸い、スーパーではパスタや肉、野菜などが比較的低価格で購入できるため、自炊することで大幅に食費を抑えることが出来ます。

食事に関してもうひとつ注意すべきことは、ヨーロッパは基本的に土日が休みの店が多いということです。
日曜日などは特に、ほとんどのスーパーは閉まっており、中央駅などの大きな駅に行かなければ買い物もできません。

当然レストランなども閉店しているため、何も準備していなければ週末も営業しているマクドナルドに行かざるを得なくなります。
これでは、せっかく奨学金を頂いていてもすぐに底をついてしまいます。

スイスには24時間営業しているコンビニもなく、ほとんどの店は夕方には閉まります。
従って、スイスでは、不規則で怠惰な生活は家計をどんどん圧迫していきます。
自分にとって、スイスでの長期滞在は、そのような生活を改め、自炊する能力を身に付けることのできる素晴らしい機会でした。


次回は「(2)スイスの交通機関と水事情」についてお話しします。

小池



2016年6月1日水曜日

就活と研究の両立

皆様こんにちは。

4月よりラーニングサポートを務めさせていただいています修士2年の藤田です。

修士2年といえばほとんどの理工の学生にとっては学生最後の年にあたり、就職活動という試練が待ち受けていると思います。

僕自身3月から就職活動をしています。
特に今年は説明会開始から選考開始までの期間が短く、説明会が終わってからすぐにESの提出が迫ったりと時間的に非常にタイトになっています。

就職活動が始まったことで一つ問題になってくるのが、研究との両立です。
就活が始まる前は合間をぬえば、なんとかなるのではないかと考えていました。
多分同じような考え方をした人は決して少なくないはずです。

しかし、いざ就職活動を始めてみると思った以上に時間をとられ、研究は3月以降思うように進められていません。

そこで、これから就活が待ち受けている皆さんにアドバイスです。
研究はただなぁなぁに進めても効率が悪いので、1ヶ月の目標・半年の目標・1年間の目標といったように段階をたてて目標を定め、就活が始まっても研究と両立出来るよう余裕をもって計画を立てておくといいでしょう。

僕自身もあと1ヶ月就活と研究の両立を頑張っていきたいと思います。