2019年4月3日水曜日

研究と特許 #1 特許料-ノーベル賞金や科研費よりも莫大な研究費

こんにちは、化学担当の菅野です。
何度かに分けて、「研究と特許」についてお伝えしていきます。
今回は、特許から得られる資金がいかに莫大か、を知っていただけたらと思います。


特許料収入はノーベル賞金をも上回る

12月10日、ノーベル賞受賞式が行われました。
ご存知の通り、ノーベル賞の賞金は莫大です。その額は、900万スウェーデンクローナであり、日本円にして1億1500万となっています。他の賞金、例えばフィールズ賞やマグサイサイ賞、五輪報奨金は数百万円程度であることと比べると、いかにずば抜けた額なのかが分かります。

2015年に医学・生理学賞を受賞した日本人に大村智先生がおり、賞金を3人で山分けした結果、およそ3000万を得ています。しかし、これよりも大きな研究費を先生らは獲得しています。代表的なのは、国からの研究費である科研費でしょう。大村先生が北里研究所に移ってから獲得してきた科研費は、総額1.18億円といわれています(1)。もっとも、これは比較的少ないと思われます。同じくノーベル賞を受賞した日本人研究者の科研費は、大隅良典先生(2016年):18億円、本庶佑先生(2018年):47億円となっています(2)。

もちろん、いずれも莫大な額なのですが、大村先生にとっては、これらの資金よりももっと多くを稼ぐ術があります。それは、特許料収入です。

「研究を経営せよ」


「研究は経営だ。経営を研究する人は多いが、研究を経営する人はいない。」-これは大村智先生の口癖だそうですが、これを体現しているのが先生といえます。北里研究所で研究をしていた大村先生は、研究成果を企業に移転し、実用化に成功したら特許料が研究所に帰ってくる仕組みを確立しました。その額は実に250億円を超え、特許料で最も稼ぐ日本人と言われています(3)。こうして得る莫大な資金は研究所の再建に用いられ、さらなる研究に投資されています。先生はマネジメントに対しても優れた力を発揮していたのです。

余談ですが、さきほど述べた仕組みは技術移転といわれ、特許と密接に関わった深く面白い事情があります。アメリカでは近年、”大学の技術移転”が一大ビジネスになっています。この辺はまた別途、お伝えします。



研究と特許#1

今回は、特許料がいかに莫大な研究費となりうるかをお伝えしました。もちろん、特許料がすべて研究費になるわけではありませんし、特許料であまり稼ぐことができない研究分野もあります。また、「お金のための研究ばかりしていたらおしまいだ」との批判も、多くあるかもしれません。しかし、特許をうまく活用して研究に活かす姿勢は、学ぶ価値があるものではないでしょうか。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。ご意見等がありましたら、いつでもコメントをお待ちしております。


参考文献
(1)原泰史、”オープンイノベーションを政府は支持できるのかー大村智氏ノーベル賞受賞の意義”、https://www.slideshare.net/scirexcenter/ss-64898705(引用日:2018年12月21日)
(2)文部科学省、”総合科学技術・イノベーション会議有識者議員懇談会 文部科学省戻出資料 平成30年10月18日”、https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20181018/siryo2.pdf(引用日:2018年12月14日)
(3)週間朝日2015年10月15日、”研究所債券、特許収入250億円 ノーベル賞・大村智教授の経営手腕”、https://dot.asahi.com/wa/2015101400056.html?page=1(引用日:2018年12月21日)