2023年2月13日月曜日

修士2年間を振り返って(相良)

こんにちは。ラーサポ木曜担当の相良です。

私事ですが、先日修論審査会が終わり、大学院での2年間の研究に一つ区切りをつけることができたことにほっと一息ついています。大学院に進学したばかりの頃は、社会に出て働き始めた文系の友人の話を聞いて、大学院進学という進路が本当に自分に合っていたのかを悩むこともありました。しかし、修士の2年間を振り返ってみると、自分にとっては大学院でしかできなかったな、と思うような経験がいくつもあり、大学院進学を選択したことは間違いではなかったと思っています。

今回は修士の2年間について振り返って、個人的に大学院に進学してよかったと思った3つのことについて話したいと思います。

企業との共同研究

私は、研究室配属以前より企業との共同研究に興味があり、卒業論文の研究テーマを決める際にも企業と新しい装置を開発するテーマを選択していました。しかし、実際に研究をスタートしたB4の春学期はコロナウイルスの影響により、企業の方との面談はおろか、キャンパス内にも入構できない状況でした。必然的に私のテーマは大学内のみで完結する方向へと調整せざるを得なくなり、企業の方からものづくりの現場の声を聞くことはかないませんでした。
しかし、B4の終わり頃からコロナウイルスによる規制も徐々に緩和され、自分が主として進める研究とは別で、新しい装置の開発に携わることができるようになりました。共同研究の進め方は相手の企業や研究室によって異なると思いますが、私の場合は、企業からお願いされた測定などを行いつつ、こちらから改善案を提案させていただく、比較的自由な形でした。実際に販売を予定している装置の試作品を用いて測定実験をおこなったり、製作コストを考えつつもユーザーの使いやすさを追求したりと、大学の中で完結する研究とは全くちがう楽しさがあり、将来ものづくりに携わることを志していた私にとって貴重な経験だったと思います。(出張で秋の京都に伺ったのもいい思い出です)
もし、学部で卒業してしまっていたら、このような経験はできなかったと思いますし、何より、実際のものづくりの現場を体感したことは、卒業後の進路を選択する上で大きな判断基準になったと思っています。

オンラインの学会と現地での学会

修士課程に進学するからには一度は国際学会に参加してみたい!と思っていた私は、卒業論文が一段落すると、M1の秋に開催されるIEEE Sensors 2021 (in Sydney)に参加するべく準備を始めました。要旨を提出し、待つこと数か月、修士での研究を進めながら、学部の研究を学会用にまとめて、就職活動もして、と忙しい中で、夏ごろ届いた採択のメールはとても嬉しかったことを覚えています。しかし、会期の1~2か月前、コロナウイルスの流行を鑑みて学会はオンラインにする旨が通達されました。オンラインの学会は、自分で作成したアバターで歩くことができる専用のバーチャル空間が用意されているなど、それはそれで面白いものではあったのですが、時差もある中で夜遅くに自室でパソコンに向かい、一人で発表をするのは、なんとなくさみしいものでした。
もう学会に出すのはこりごり、と思っていたM2の春。就職活動を終えて、修士の研究に本腰を入れなくては、と思っていた私に、先生がIEEE Sensors 2022はDallas, USAでやるらしいから投稿してみようよ、と声をかけてくださいました。最初はなかなか腰が重く、投稿するのを諦めようかと思った時もありましたが、無事採択の通知を受け取ることができました。
初めてにして、最後の国際学会は、それまでにイメージしていた「学会」とは全く違うものでした。口頭発表やKeynote スピーカーの講演の時間にはいくつもの質問が飛び交い、研究内容を共有しようという参加者の積極的な姿勢が印象的でしたが、会期中に行われたGala dinnerでは、参加者一人一人にカウボーイハットが配られ、テキサスの伝統的な踊りをみんなで踊ったり、現地で有名な動物であるアルマジロのレースが開かれたりと文化交流の面でははっちゃけている様子に驚きました。英語でのポスター発表は緊張する時間でしたが、前日の夕食で隣の席だった研究者が発表をわざわざ聞きに来てくれ、興味をもってくれるなど嬉しい出来事もあり、自分の研究内容を相手に伝えることの難しさと面白さを学ぶことができました。
コロナウイルスによる規制も緩和され、現地での国際学会も増えていると聞きます。国際学会の準備は大変なこともありますが、参加するチャンスがあるなら是非挑戦してみてほしいと思います!

論文の投稿

修士課程に進学するなら達成したいとおもっていたことの2つ目が論文投稿でした。せっかく学生を長くやるのであれば、その研究成果を自分の名前が入った論文という形で残しておけたらいいな、という軽い気持ちでした。
M1のはじめに参加した国内学会にて、その内容を論文として投稿することを推奨する通知を受け取ったことをきっかけに、実際に論文を書き始めました。読み手に新規性が伝わるように、先行研究を調べなおしたり、追実験をおこなったり、英語での表現を修正したりと初めての論文執筆は想像以上に時間がかかり、先生には何度も何度も原稿を添削していただきました。やっとの思いで提出した論文は3回ほどrevisionの指示を受け、最終的にはrejectとなってしまいました。ここまで書き始めてから半年かかっていたため、通知を受け取った時はショックでしたが、先生に別の論文誌に出してみようと声掛けをいただきました。
そこからフォーマットを直し、査読者からもらっていたコメントについて再考し、別の論文誌に提出しなおしました。その結果、revisionの指示はあったものの、最終的には採択してもらえることとなりました。
acceptの通知をもらったときはとても嬉しかったことを覚えています。現地学会の参加が決まったことと併せて、研究面において嬉しかったことtop2だと思います。忍耐が必要な作業で、なかなか書き始めるまでに気合が必要だと個人的には思いますが、自分の名前が入った正式な文書の形で研究成果を残すことができるので、これも修士課程で挑戦してみてほしいことの一つです!


以上が私が修士課程に進学してよかったと思ったことです。勿論研究以外の面でもよかったことはありますが、これから修士課程に進む人にとってなにかしらの研究のモチベーションになれば幸いです!

最後まで読んでくださり、ありがとうございます