2016年7月4日月曜日

アメリカへの学位留学について―第3回 アメリカの大学院入試~準備編~(連載)

こんにちは。OBスタッフの山田です。
アメリカへの学位留学について―第3回は「アメリカの大学院入試~準備編~」です。

アメリカの大学院入試を受けたということを話すと稀に「アメリカまで入試を受けに行くの大変だったんじゃない?」と言われる事があります。
確かに日本の大学()入試は大学へ赴いて個別の試験を受けるのが一般的です。

しかし、流石は留学生大国アメリカといった感じで、アメリカの大学院入試に必要なテスト等は全世界で受けることが出来、出願の際にはインターネットを使って書類をアップロードするだけというのが一般的です。

また、アメリカの大学は入るのは簡単、出るのが難しい という話を良く耳にしますが、半分YESで半分NOといった所でしょうか。
確かに学部の場合、自分の住んでいる州の州立大学へ進学するのは比較的容易な様です。居住者はある一定以上のGPAやスコアがあれば基本的に入学出来ると聞いています。
しかし、教育に重きを置いている学部と違い、研究に重点を置く大学院では話は異なり、トップスクールともなると競争はかなりの激しさとなります。
合格率は10~20 %あたりでしょうか。
お、意外と高い!と思う方もいるかもしれませんが、アメリカの大学はいくらでも併願できます。多くのトップスクールの合格をかっさらっていく超優秀な学生が中には何人もいるので、日本のシステムで考えれば10 %以下と言っても過言ではないかもしれません。
さらに言えば、そんな中でもMITの合格率は6 %と聞きました。
では合否を決める要素は何でしょうか。

以下にアメリカの理工系大学院入試に一般的に必要な物を列挙します。
大学の成績 GPA (Grade Point Average)
英語のスコア TOEFL iBT or IELTS (非英語圏出身の受験生のみ)
GRE (Graduate Record Examinations) 通常はGeneral 理学系学部ではSubjectも必要
SoP (Statement of Purpose) 志望動機書
Recommendation Letter 推薦状 一般的に3
Application Fee 一校当たり50~120 $程度 クレジットカードで払える
試験はTOEFLGREだけであり、大学が独自に設ける様なテストは存在しません。

それでは一つずつ詳しく解説していきます。

大学の成績 GPA
慶應義塾大学の場合、成績はA,B,C,Dと付けられ、Dは不可です。このケースではA4点、B3点、C2点、D0点として、{4A+3B+2C+(0D)} / (A+B+C+D) という形で単位数を用いて計算します。つまりオールAを取った場合で4.00、平均でBという成績では3.00になります。一部アメリカの大学などではA+という4.3のスコアが付くことがありますが、一般的には4.0扱いとし最大を4.00にすることが多いです。

日本人はGPAをあまり気にすることが無いですが、アメリカでは就職、大学院受験において非常に重要なスコアと考えられています。一般的に大学院Ph.D.課程に進学する場合3.5以上は無いと厳しいですし、トップスクールでは3.8以上の人たちが大多数だと思います。

TOEFL iBT
日本では同じくETSが開催しているTOEICの方が有名ですが、アカデミックな英語力を評価するテストとしてTOEFLは作られており、大学院受験ではアメリカだけでなく、ヨーロッパの一部でも採用されています。
TOEFL iBTはリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4つのセクション各30点の合計120点で構成されています。
必要とされるスコアは各大学のアドミッションのページに明確に記載されております。
理工系の大学院で求められるスコアは大体80~100点であり、90点は取っておくとよいでしょう。
基本的には最低点を超えていれば、合否に影響することは無いとされています。また、最低点を数点下回っても合格したという話もしばしば聞きます。
ただし大学によっては厳密に1点でも足りないとダメという場合もあります。(実際に私も出願した大学のうち1校はTOEFL4点足りないという理由で落ちました)
また、各セクションの最低点を定めている大学もあります。
: スピーキング22点以上 など
基本的にはTOEFL iBTIELTSどちらも使えますが、MITElectrical Engineeringの様にIELTSしか受け付けていない大学もあります。
いずれにせよ各大学のアドミッションページを良く確認し、必要であればメールで問い合わせることをオススメします。

GRE
アメリカの大学院を受験する人は必ず受けなければいけない試験です。GREGeneralSubject2種類あり、GeneralVerbal (英語) Quantitative (数学) Analytical Writing (小論文)3セクションに分かれています。ほぼ毎日受験出来ますが、頻度や回数に制限があるのでお気を付け下さい。
Verbalは英語のネイティブ達が受ける英語の試験なので、普通の外国人には歯が立ちません。語彙レベルの違いに愕然とすることになりますが、もし高得点を取りたいと思ったらTOEFLのレベル+5000語くらいの単語数が必要と言われています。ただし、理工系の大学院でこのVerbalの高スコアを求められることはほとんど無く、私も下から10%というスコアでした。
Quantitativeは大学生が受ける試験としては簡単すぎる程レベルが低いです。日本の理系の大学生ならば満点が狙えます。(内容としては中学レベル)このスコアが170点満点で165点あたりを超えないと、理系としては印象が悪いです。
Analytical WritingTOEFLWritingの様な試験ですが、採点の厳しさが段違いです。TOEFLと違ってネイティブも受ける試験なので、少しでも文法ミスやAwkwardな所(ネイティブぽくない所)があるとスコアが下がっていきます。ここも私は下から10%でした。

Subjectテストは理学系や人文系の学部への出願に必要となります。
科目はBiochemistry, Cell and Molecular Biology, Biology, Chemistry, Literature in English, Mathematics, Physics, Psychologyがあるようです。SubjectテストはGeneralと違い年に3(4月、9月、10)しか開催されず、しかも日本では毎年、福岡か沖縄でしか開催されないことが多いです。アメリカから見れば日本が小さいのは仕方ないですが迷惑な話です。
私はPhysicsを受けましたが、中々タフな試験でして、170分で100問を解くことになります。問題のレベルは学部レベルですが、物理全分野から出題されます。
回答は5択のマークシート式で、正解は1点、不正解は-1/4点、つまり期待値が0になるようになっています。これらの素点を100点満点で計算し、統計処理を行い990点満点のスコアが出ます。物理では最近は素点で80点程取れれば満点となるようです。トップスクールを目指すのであれば満点が望ましいです。
なお、GREはどちらも5年間スコアが有効なので、大学院受験を検討している方はなるべく早めに受験してしまうことをオススメします。

SoP 志望動機書
これはかなり重要な書類です。日本の大学院受験でも志望動機書を求められると思いますが、あまり評価対象にならないと感じます。
稀に英語の正しさのことばかり気にする人がいますが、英語にミスが無いのは当然で、むしろその内容の方に苦戦することになると思います。
SoPは各大学ごとに求める内容の差が多少ありますが、基本はなぜあなたがその分野(志望する分野)に興味を持ち、どのような経験をし、なぜ大学院へ進学したいと考え、その中でもなぜ○○大学なのかを具体的に書くことになります。長さは大体1000 word未満です。これが非常に大変であり、出願締め切りギリギリまで推敲することになります。
具体性を含み、論理的に展開されたSoPが良いとされています。

推薦状
日本人にはあまり馴染みが無いですが、欧米では推薦状は色々な場面で要求されます。大学院受験では多くの場合3通必要であり、内1通は指導教員から貰う事になるでしょう。自分のことを良く知り、評価出来る人から貰う事が基本で、場合によってはアカデミアに従事している人から2通以上といった制限もあります。私は指導教員から1通、共同研究をしている教授お二人から2通いただきました。
世界的に名の知れている教授や、アメリカの大学で学位を取得している教授、アメリカの大学で研究している教授(特に受験校)などから貰えると非常に強い武器となります。
しかし、ただ推薦状を貰えば良いわけではなく、内容が非常に大事です。
日本で推薦状と言うと「○○君は非常に優秀で――研究も熱心に取り組んでおり――」といった抽象的なものを想像しがちですが、効果的な推薦状と言うのは非常に具体的です。
例えば「○○君は成績では学年TOP 5%で――、研究では彼の作成した試料で△△の効率が30%向上した。彼はこの結果をもとに○○という学会で口頭発表を経験し――」といった感じです。
と言っても推薦状を書いてもらう先生が何と書くかは分からないので、慣れていない先生にはどういった内容を書いてもらいたいか相談した方が良いと思います。

Application Fee
受験にはお金がかかります。貯金しておきましょう。

以上となります。
ではこれら全てが優秀でなければいけないのでしょうか?
もちろん全てが良ければ文句なしですが、中々そうはいきませんね。
合否は総合的に判断されますので、一つダメな所があっても他のイイ所でカバーできます。

一つ有名な話ではニュートリノの観測でノーベル物理学賞を受賞された小柴先生は、東大在学中あまり成績が良い方ではなかったそう(優が2個?)ですが、後にノーベル賞を受賞される朝永振一郎先生から推薦状を貰いロチェスター大学へ進学しています。(もちろん合否の決め手が何かは分かりませんが…)

山田

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