2020年7月3日金曜日

【番外編】理工学部全体の4%しかいないレア学科:化学科について

2018-19年度に化学と英語を中心に相談を受け付けていた、元スタッフの菅野です。
昨年2019年のノーベル化学賞はリチウムイオン電池に関してで、日本人の受賞者に注目が集まりましたね。本当に素晴らしいことだと思います。


では慶應の化学はいまどういう状況なのか?
今回は「実学のすゝめ 番外編」ということで、慶應の基礎化学を担っている化学科について、化学科の学生である著者(現在 理工学研究科後期博士課程1年)がざっくりと紹介します。

0. 内容

1. 数字でみる化学科
2. どういう学生がいるのか?
3. 研究室紹介


1. 数字でみる化学科

4%

→→→慶應理工学部全体(約1000人)に占める化学科の人数(40人)。キャンパス内で出会えたらラッキー!な激レア人種です。逆に、学科内の人はみんな知りあいになり、どのサークルに入っているとか何のバイトしているとかまで大抵知っています。

5:1

→→→男子:女子のおよその比率。理工学部の中でも女子学生の比率が比較的高いと思います。

2人

→→→先生1人に対する学生の数。先生との距離がとにかく近く、国立大学レベルかもしれません。

7/25→14/25

→→→2年生と3年生のおよその週コマ数2年生の授業はおよそ週7コマですが、3年生はおよそ週14コマと2倍になります。週7コマというのは、他学科2年生と比べてもかなり時間のゆとりがあるのですが(要するにヒマ)、3年生は少し忙しめになります。

2. どんな学生がいるのか?

実は化学科は、第一希望で入ってきた学生と、そうではない学生がおよそ半々くらいという二極化が起きている珍しい(?)学科です。その二極化というのも極端で、第一志望でくる子は学問越え(注1)してでも来る子がいる一方で、そうでない子は最低志望順位(注2)で来る学生も多くいるほどです。
二極化しているがゆえに、実にバラエティ豊かです。第一希望で来る学生は、本当に優秀な人が多いです。学部時代の成績におけるA-Cが150単位という成績オバケもいました。実際に私の知る限りでは、矢上賞を受賞する学生が毎年のように居るほか、慶應理工学部のパンフレットに写真掲載された学生もいました。一方、第一志望でなかった学生もユニークな人が多いです。例えば化学以外の道を見出した学生として、プロギャンブラーになった人、某国立大学の法学研究科に進学した人などを知っています。しかしもっと興味深いのは、化学科に不本意ながら入学しても、次第に化学を好きになる学生が意外と多いということです。実は私も、化学科は第一志望ではありませんでした。しかし3年次の学生実験と4年次の卒業研究で有機化学に目覚め、修士課程はおろか博士課程にも進学するほどにまでなりました。

(注1)(注2)
慶應理工学部では、入学時に将来の学科の大枠は決まっていますが、1年次は教養課程に近く、理工学全般を広く学びます。ちなみに化学科へ進学するためには学門3(2020年度より学問E)しかなく、他の学門から行くには学問越え(後述)という超難関を突破するしかありません。
2年次に専門学科に別れますが、成績に応じて行くことのできる学科がある程度制限されます。人気の高い学科は競争が激しく、第一志望で行くことのできない学生もでてきます。一方、成績が飛びぬけて良い学生に対しては、本来進学できない学科へ移ることが許される特別な制度があり、これを「学問越え」といいます。


3. 研究室紹介

●化学の分野

一般的に化学は、大きく分けて3つの分野に分けることができます。ただし近年、境界はあいまいになってきているうえに、他分野との融合も著しくなっているので参考までに。

有機化学:炭素の化学。食べ物、プラスチック、生物をはじめとして身の回りのほとんどが炭素を含む有機化合物です。

無機化学:炭素以外の元素の化学。よく知られている無機化合物としては、半導体や金属材料などがあります。

物理化学:化学を数学的に解析する分野。化学反応を計算によって予測するなど、近年目まぐるしい発展がみられます。

●研究室(2020年度)

ここでは、私の個人的な見解を簡単にのせます(重要)。正確かつ詳細な情報に関しては公式HPをご覧ください。

有機金属化学研究室(垣内史敏教授)
新しい化学反応の開発を研究している。世界を驚かせた初の実用的炭素ー水素結合の官能基化反応(村井反応)やチェーンウォーキングという現象を利用した化学反応の研究が有名。

天然物化学研究室(末永聖武教授)
自然界に隠されている有用な有機化合物を見つけ、その利用を目指している。シアノバクテリア由来の新規物質発見などが有名。

機能材料化学研究室(羽曾部卓准教授)
人口光合成や太陽電池、光る物質の開発など光化学の研究を主に行っている。ほんの刹那の化学反応(ナノ秒=0.000000001秒。瞬き一回はおよそ0.2秒)を分析したりする高い装置がある。

生体分子化学研究室(藤本ゆかり教授)
免疫に関わる化合物に関して広く研究している。新規化学合成法の開発だけでなく、免疫機構にどう関与しているかの生化学についても研究している。

・反応有機化学研究室(山田徹教授)
新しい化学反応の開発を研究している。二酸化炭素を有用化合物へと変換する化学反応や、マイクロ波を利用した化学反応が有名。

無機物性化学研究室(栄長泰明教授)
新しい機能材料の研究開発を行っている。光で磁性を制御する材料や、特にダイヤモンド電極を用いた新規分析法や新規合成法の開発が有名。

表面化学研究室(近藤寛教授)
放射光X線技術を用いて化学反応の解明を行っている。特に現代科学に欠かせない「触媒」の機能解明に関する研究が有名。

・物理化学研究室(中島敦教授)
新しい物質概念の創出を目指し、原子をたくさん凝集してできた「ナノクラスター」に関して研究している。特に多成分クラスターに力を入れており、磁性クラスターや巨大クラスターなどが有名。

・生命機構化学研究室(古川良明准教授)
金属を含むタンパク質について研究している。特にタンパク質が、銅という金属をどう補足するのかを調べ、その解明によりALSなど難病治療への応用も目指している。

・理論分子化学研究室 (畑中美穂 准教授)
2020年度新設。コンピュータを用いた計算により、化学現象を理解することを目指している。新しい触媒や発光材料のシミュレーションや、機械学習による材料特性の予測を行っている。


いかがでしょうか。
化学科は、学生も教員も研究も多様でユニークです。

今回はこの辺にて。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


菅野

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