2023年11月10日金曜日

SPring-8のサマースクールに参加して (金曜担当 大渕)

こんにちは、担当曜日が木曜日から金曜日にお引越しになりました、化学科の大渕です☺

学会や研究室内での発表に追われ、執筆がとても久しぶりになってしまいました、、気付けば11月。今年も残すところあと2ヶ月ですね。年内も健康に頑張っていきましょう!

さて、ここからは7月にサマースクールに参加するために足を運んだ放射光施設、SPring-8について紹介しようと思います。私は普段KEKという別の放射光施設を使っていて、あまり使わないのでそこまで詳しくはありませんが、SPring-8とKEKの似ている点、異なる点について紹介できたらなと思います。

   
何のための施設?

放射光と聞いて真っ先に何を思い浮かべるでしょうか?放射線と結び付けて身体に悪そうと感じる人がほとんどかもしれませんね。確かにかなり微量ではありますが放射線も生じています。しかし身体に被害が出るようなレベルではありません。

放射光施設では電子を大きなリングで高速回転させ、それにより発生する質の良いX線を利用し、表面を分析する様々な実験を行います。

SPring-8ではリングから放出されたX線が50個ほどから成る実験ステーションまで届くようになっており、そこで実験を行います。X線はエネルギーにより種類が異なり、エネルギーが高いと硬X線、低いと軟X線に分類され、それにより実験ステーションに設置する装置の外見が大きく異なります。SPring-8は日本最大級のリングを有しており、それに伴って放出できるX線のエネルギーも大きいため、ほとんどの実験ステーションが硬X線を利用しています。ちなみにKEKはリングが小さいので、軟X線、硬X線を使っているステーションは半々くらいです。


どこにあるの?

兵庫県相生(あいおい)市にあります。新幹線でJR相生駅まで行き、そこからさらに1時間ほどバスに乗ります。私の場合、自宅から4時間ほどかかりました。もっとかかりそうですが、案外短時間で行けて驚きました。

なかなか来ない駅なので記念に撮りました。新幹線の駅なのにとてもこじんまりとしていて周りには山しかなく、来て早々不安になりました。笑


標高が高いので7月だったのにとても涼しく、晴れていると遠くの方まで見渡すことができます。また高い建物がとても少ないので空が開けており、開放感のある施設です。街灯が少ないので、夜は星が良く見えます。この写真は友人と20:00頃にお散歩した際に撮影しました。

また敷地内では野生のシカを群れで何度か目撃しました。昔はもっと居たみたいですが、今では頭数が減少しているようです。

ここで1つマイナスポイントとしては敷地内にあるコンビニが18:00で閉店してしまい、1番近くのコンビニでもバスで2駅分かかるという点です。全くコンビニエンスじゃないといって話題になりました(笑)20:00頃にお菓子を食べたくなり、友人と1時間ほど歩いて近くのコンビニまで行きました。今となっては楽しい思い出ですが、よくよく考えてみると野生の動物が出てきて襲われたりしなくて良かったな、と思います。


何で移動するの?

施設が広いので基本的に自転車で移動します。自転車に乗れない人はかなり大変です、、、さらに驚くことに実験ホール内が広すぎて入口から真反対にあるビームラインまで歩くと30分ほどかかるので、実験ホール内も自転車で移動します。この写真を撮ったときはホールの見学中だったのでみんな歩いていますが、ここを自転車で移動します。かなりびっくりします。

ちなみにKEKの実験ホール内は歩いて移動できる数しか実験ステーションがないので、自転車で移動するのは実験ホール外のみです。


どこに泊まるの?

SPring-8が運営している宿泊施設に泊まります。何棟かから成るマンションを思い浮かべてもらえれば良いかと思います。施設の出口から実験ホール入口までは歩いて約5分ほどで、普段学校まで1時間かかっている私にとってはかなり好立地でした。お部屋にはベッドとお風呂、机、トイレがあり、キッチンや洗濯機は共同でした。ここでとても便利だなと思ったのはKEKと違いユニットバスではないことです。普段利用しているKEKの部屋はユニットバスなので、SPring-8のお風呂がかなり広く感じました(笑)


サマースクールで学んだこと

サマースクールは4日間開催され、最初の2日で放射光やX線を使った研究の基礎を講義形式で学び、最後の2日で実際に放射光を使って実習を行うタイムテーブルでした。実習は事前に自分がやりたい内容を第6希望まで提出し、そのうち2つのテーマについてそれぞれ1日で測定から解析まで行うというものでした。私は普段行わない結晶の構造解析と、SPring-8ならではの硬X線を使った測定を選びました。装置の構造、測定手法が普段とは全く異なり、基礎的なことから学べたので良い機会になりました。また実習に携わってくださった先生方がとても和気あいあいとしていて雰囲気が良く、普段の測定中は先生とほとんど雑談をしない私にとっては何だか新鮮でした。研究に没頭することも大事ですが、休めるときは休んで、集中するときは集中して、というメリハリが取れているなと感じました。


皆さんにとって少しでも放射光施設が身近な施設となったら良いな、と思います。

今回私が参加した大きな理由は普段使っているKEKとSPring-8では何が違うのか、ということを肌で実感するためでした。SPring-8は日本最大級の放射光施設なのでとても広いということは聞いていましたが、実際に目の当たりにすると本当に大きくてKEKの施設がとても小さく感じました。特に実験ホールは一周するのに徒歩1時間もかかり、20分もあれば一周できるKEKとは大違いでした。

また座学、実習を通して放射光について学習できたことはもちろん、研究をしている同世代の友人ができたこともとても大きいなと思いました。普段から放射光を使った実験をしている人はもちろん、全く違う分野で研究しているけれど興味をもって参加した人もいて、どんな研究をしているのか、自分の研究の面白みはどこにあるのか、なぜ参加しようと思ったのかという理由に対してたくさんの意見があって、1つのことに対して多角的な意見があるのはとても面白いなと改めて感じました。また自分にとっての"当たり前"を良い意味で覆してくれ、発想することの楽しさを感じました。それぞれに研究に対する悩みや将来に対する悩みなどがあって、皆同じように悩んでいることに少し安心しました。


普段の環境から離れることに少なからず不安がありましたが、参加して良かったと思います。皆さんも参加しようか悩んでいる行事やイベントに少しでも参加してみてください。何か新しい学びや発見が得られるかもしれません。


ではでは!


大渕