2023年11月9日木曜日

化学科・理論化学研究室の実際(木曜担当近藤)

こんにちは!

毎週木曜12:30-14:00を担当しております、化学科修士1年の近藤です。

最近は研究室選びで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。私の所属する理論化学研究室(畑中研)は化学科で唯一実験を行わない研究室なので、他の研究室とはだいぶ毛色が違います。今回はそんな理論化学研究室について簡単に紹介させて頂きます。多くの方が抱いているであろう疑問に対して回答するというQ&A形式で進めたいと思います。


Q1. そもそも何をしている研究室なの?
A1. 実験以外のことは何でもやります


知りたいことが最初にあり、それを知るために有効そうなアプローチは何でも行います。畑中先生の授業を受けたことのある方は「機械学習の研究室」という印象を持たれているかもしれませんが、実際には機械学習以外にも、電子状態計算、反応経路探索、分子シミュレーション、量子コンピュータなど、あらゆる計算手法に手を広げています。これらの計算手法の中から研究テーマに合ったものを選んで(あるいは組み合わせて)、真理を探究しています。例えば私の場合、水分子の運動について研究しているので、水のシミュレーションを行っています。


Q2. 研究の良いところ、魅力は?

A2. アイデア次第でオリジナリティの高い研究が簡単に実現するところ


オリジナリティの高い研究をするためには、新しい研究手法の開発が不可欠です。実験の場合、新しい実験装置を用意する必要が出てくることもあり、全く新しい研究の実現には高いハードルが存在します。一方で、計算科学における実験装置はプログラムです。プログラムの書き方次第であらゆる計算を実現することができます。例えば、摩擦の存在しない世界をシミュレーションしたり、重力が3倍の世界をシミュレーションしたりといったことも可能です。何か新しい計算方法を思いついたら即座にプログラムを書いて実現できるのが計算科学の良いところです。あなたのオリジナル計算法を是非開発してみて下さい。


Q3. 大体の研究の流れは?

A3. 目標設定→研究方法の模索→計算→卒論


最初に先生と相談し、研究テーマを決めます。強い希望があれば別ですが、毎年先生がそれなりの数のテーマ案を提示してくれるので、その中から選ぶ人がほとんどです。実は、このテーマ決めの前にプログラミング講座と簡単なレポート課題があり、それが性格診断の役割を担っているので、その結果をもとに各メンバーに合ったテーマを勧めてくれます(勧められたテーマを選ばなくても大丈夫です)。テーマが決まったら、その研究のために勉強すべきことが何か、先生が教えてくれます。その指示をもとに、計算のやり方や計算対象についての勉強を始めることになります。勉強にはそれなりの時間がかかるので、春学期は勉強だけで終わると思った方がよいです。といっても、座学だけでなく、実際に簡単な計算をしたりプログラミングを書いたりすることはあるので、結構楽しいです。秋学期に入り、必要な知識が集まったら本格的な計算が始まります。予想通りの計算結果がすんなり得られることは稀です。ほとんど場合、予想と違ったり、よく分からないバグと遭遇したりします。計算結果は先生に報告し、ディスカッションを通して計算結果を考察したり、新たな方針を考えたりします。そしてまた計算です。計算とディスカッションを繰り返し、ある程度結果がまとまったところで、卒論の執筆が始まります。これを書き上げ、提出すれば4年生としての研究は一段落です。


Q4. ブラックですか?

A4. 化学科の中ではかなりホワイト


研究を家でもできるということがプラスに働いています。コアタイムは10:00-16:00ということになっていますが、厳密なものではなく、研究室に来ない日もざらにあります。また、一度計算機に命令を出したら寝ていても研究が進みます(実際には計算が問題なく進んでいるか確認する必要はありますが)。他の研究室では平日に実験を行い、土曜に論文紹介や進捗報告を行うところもあるようですが、畑中研では土曜は完全休日です。ただし、2、3週間に1回の頻度で進捗報告を行うので、あまりにも研究をさぼっていると先生から詰められます。ぬるい研究室ではありません。


Q5. 就職先はどうなの?

A5. IT系が多い(化学系もあり)


最近人気の高まっているITコンサルやシンクタンクに行く人が多い印象です。研究で機械学習に熟達していると、インターンのときにアピールしやすいようです。一方で、最近は化学メーカーの計算科学者需要も高まっており、そちらに行った先輩もいます。具体的な企業名を知りたい方は研究室見学にお越し下さい。


Q6. 研究室の雰囲気はどう?

A6. まったり穏やかな雰囲気


2023年度の理論化学研究室のメンバーは畑中先生、稲垣先生をはじめとして、特任助教が1人、D2が1人、M2が4人、M1が4人、B4が4人の計16人です。メンバーは全員穏やかな性格ですが、畑中先生を中心としてお酒好きな人が何人かいるので、飲み会のときは盛り上がります(アルハラはないので安心してください)。先生が女性で、且つ女子メンバーが2名在籍していることもあり、女子学生さんにとっても過ごしやすい環境だと思います。また、畑中先生も稲垣先生も面倒見のいい先生で、研究やそれ以外のことに関しても相談すると真摯に対応してくださります。お二人とも、学生を放っておくタイプではないので、研究をしていく中で完全に途方に暮れることはないと思います。


Q7. プログラミングとかしたことないんですが...

A7. 未経験者歓迎(マジ)


新4年生は3月に畑中研に来てプログラミングを学ぶところから始めます。畑中研は初心者向けのプログラミング教材が充実している上、先生の教え方もうまいので、1か月足らずで最低限のコードは書けるようになります。元未経験者として保証します。


Q8. 数学が得意じゃないんですが...

A8. 全く使わないわけではないが、得意である必要はない


教科書や論文の中で数式が出てくることはあるので、数式アレルギーはない方がいいです。また、プログラムを書く上で線形代数の知識があると得をすることがあります。とはいえ、自分で手計算をする機会はそこまでありませんし、計算内容も高校数学以下のレベルであることがほとんどです。大学レベルのマニアックな微積分などはほぼありません。高校数学+基礎レベルの線形代数の知識で十分です。


Q9. 研究室の短所・気になる点は?

A9. 他のメンバーの研究が理解しきれないところ


上述の通り、理論化学研究室の研究範囲は広く、同じ研究室のメンバーでも全然別のことをやっていたりします。その上、各々の専門性が高いため、同期ですら何をやっているのか分からないことがあります。進捗報告で他のメンバーの研究の話を聞く機会はあるのですが、それを理解することが難しいです(私が不勉強なだけかもしれませんが)。とはいえ、自分から少し離れた研究の話を聞けるのは魅力でもあります。細部を理解できなくても気にせず、大枠で理解しようと頑張っているところです。それと、誤解のないよう断っておくと、個々人が完全に孤立しているわけではありません。全然別の研究をしている人がいる一方で、似たような研究を行っているメンバーもいます。特に、計算ツールの使い方などは先輩に聞けるので、そこから交友が広がったりします


Q10. 研究室に入る前にやっておいた方がいいことはありますか?

A10. 特にない


化学Aや分子量子化学の復習をしても良いですが、研究室に入ると「輪講」という勉強会に参加することになるので、そこで量子化学を復習できます。余裕を持って輪講に臨みたいのであれば、量子化学の復習をしておくのもありだと思いますが、絶対にやるべきことと言う程ではありません。それと、PCの操作に慣れていない人はブラインドタッチ(キーボードを見ずにタイピングすること)の練習をしておくと少しだけ得できます。ブラウザで遊べるタイピングゲームが幾つかあるので、それらを活用してみてください。とはいえ、これに関してもそこまで重要ではありません。研究室でプログラミングしているうちにタイピングは自然と速くなります。


最後に


ここまで読んで頂き、ありがとうございました。現在(11月)、畑中研では研究室見学を受け付けております。畑中研ホームページから見学可能な日を確認できますので、見学希望の方はそちらで日時を決めてから畑中先生にメールでお問い合わせ下さい。冷やかしも大歓迎です!無理やり勧誘するようなことはしないので、是非覗いて行って下さい。
また、化学科の研究室選びで悩んでいることがあれば、是非ラーニングサポートまでお越し下さい。ご相談お待ちしております。

近藤