こんにちは, 2022 年度ラーサポ木曜日担当の程島です. 今日はおすすめ本として1冊紹介したいと思います.
今回私がおすすめする本は 赤攝也(2014)「実数論講義」日本評論社 です.
https://search.lib.keio.ac.jp/permalink/81SOKEI_KEIO/188bto4/alma990024118370204034
この本では "実数" とタイトルにありますが, 実数でけではなく, 自然数, 整数, 有理数というような "数" に着目して議論が展開されていきます.
私たちが日常生活や実験などでも何気なく使っている整数や小数というものにおいても深く考えてみると次のような疑問点が思い浮かびます.
- $19980617$ という整数は何を意味しているのか ($1 \times 9 \times 9 \times 8 \times 0 \times 6 \times 1 \times 7$ とは違うのか)?
- 整数 $n,m$ に対して, $n \leq m$ が成り立つことと, $n \lt m+1$ が成り立つことはなぜ同値なのか?
- $\dfrac{1}{2}, \dfrac{2}{4}$ は同じ有理数とされているが, どういう観点で "同じ" と見なしているのか?
- $\sqrt{2}$ は2乗すると $2$ になる正の実数として定義されているが, そんな実数は存在するのだろうか? そして, そのような実数はただ一つに定まるのだろうか?
このような疑問達に対して1ステップ1ステップ丁寧にこの本では議論されています.
また, この本では "数" の話だけではなく, 三角関数や指数関数に関する章もあり, これらに厳密な定義を与え, そこから $$\sin (\alpha+\beta)=\sin \alpha \cos \beta+\cos \alpha \sin \beta, \quad \log_{a} b=\dfrac{\log_{c} b}{\log_{c} a}$$ などの皆さんがよく使っている公式の証明をしていきます.
この 「実数論講義」は中々手を出しにくいような本のように見えますが, 数学3Aを通して「実数とは何なのか?」ということを思い始めた人に是非お勧めしたい本です.