こんにちは。2022年度ラーニングサポート金曜担当の見川です。
おすすめ本紹介シリーズとして、今回私からは2冊紹介させていただきます。
量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために
まず1冊目は、清水明著の「量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ)」(サイエンス社)です。
https://search.lib.keio.ac.jp/permalink/81SOKEI_KEIO/188bto4/alma990013283910204034
この本は、量子力学の初学者に読んで欲しい本です。
一般的な量子力学の教科書は、黒体放射から始まり二重スリット、粒子と波の二重性と続いています。こうした歴史にそって量子力学を勉強するのは、当時の物理学者のお気持ちなどがわかりやすいですが、量子力学の構造と非常に相性が悪いです。(逆にこういう風な本がお好きな方は朝永振一郎著の『量子力学』を読んでみてください。)
従来の教科書にあるような歴史の流れなどは無視して、量子力学を数学の公理から始めるスタイルで書き直したのがこの本です。非常に流れがスッキリしており、キッチリと抑えておかなければならないのが公理としてあるので、学習もしやすくなっています。
数学的な説明が多いところがあるので、数学が苦手な方は別の本がおすすめですが、そうでない方は方はぜひお手に取ってみて下さい。
熱力学の基礎 第2版 I: 熱力学の基本構造
2冊目は、同じく清水明著の「熱力学の基礎 第2版 I: 熱力学の基本構造」(東京大学出版会)です。
https://search.lib.keio.ac.jp/permalink/81SOKEI_KEIO/188bto4/alma9926495220504034
これも上記の本と同様に、公理みたいなものから熱力学を構成していく本で、非常にスッキリしています。しかし、エントロピーから始まり、そこから温度を定義するスタイルで初学者には非常にハードルが高いですが、別の本で熱力学を勉強した方ならおすすめの本となってます。
熱力学の本といえば、田崎著のものもありますが、清水熱力学のほうがスッキリしていて、自分には合っていないと感じました。
ゲージ理論・一般相対性理論のための 微分幾何入門
3冊目は、佐古彰史著の「ゲージ理論・一般相対性理論のための微分幾何学入門」(森北出版会)です。
https://search.lib.keio.ac.jp/permalink/81SOKEI_KEIO/188bto4/alma9926569913004034
みなさん一般相対性理論は聞いたことがあると思いますが、ゲージ理論はしっていますか?
電磁気学を勉強した方なら、ゲージ変換を知っているかと思いますが、このゲージ変換を量子力学などの別の分野に応用したものです。
このゲージ理論と一般相対性理論はともに微分幾何学を基礎としていて、微分幾何学を勉強することで、Maxwell方程式が一つの式にできたり、電磁気学と量子力学が同じ理論であることがわかるようになります。
また現代物理に移ると、すべての力は4つの力に分類でき、そのうち3つがゲージ理論でかかれています。物性理論ですと、20世紀三大物性発見のうちの一つの量子ホール効果やノーベル物理学賞最有力候補のBerry位相なども微分幾何学で理解されます。
非常にわくわくするようなゲージ理論や一般相対性理論などについて初学者がイメージしやすいように書かれた本がこの本です。簡単に書いて分かりやすさを優先したために数学的な厳密さなどが失われて、専門家の間では賛否が分かれていますが、初学者の方はあまり気にならないと思うので一度読んでみてください。気に入らないもしくはより厳密に知りたい方でしたら、より詳しい 中原幹夫著の『理論物理学のための幾何学とトポロジー』をおすすめします。
最後に
いかがでしたでしょうか。私の趣味趣向が色濃く反映した記事となっていますが、少しでも興味をもっていただければ幸いです。
(見川)