2020年11月17日火曜日

【参考書紹介】新火曜担当(原)

こんにちは! 
今年度からメディアセンターの学生スタッフを担当させていただいている原です。 
秋学期からは、火曜担当へと変更させていただくことになりました。引き続きよろしくお願いいたします! 

前回のブログでは、私の簡単な自己紹介と、研究分野であるAI(人工知能)の話などを少しさせていただきました。

今回は、私がこれまで読んできた中で、非常に勉強になったAIに関する参考書を紹介させていただきたいと思います。 AIなど事前知識がない方でも理解できるような基本的な内容の参考書から、実際にプログラムを組んでみたい人向けの実践的な参考書まで幅広く紹介できればと考えています。 

 【初級者(いままでAIの勉強をしたことない人)向け】  


 AI研究の第一人者である東京大学大学院工学系研究科准教授、松尾豊先生による人工知能の入門書です。この本ではAIと人類が歩んできた進化の歴史や、AIの将来について書かれています。難しい数式やプログラムに関する内容はほとんどなく、本質をとらえたわかりやすい構成になっているため、いままでAIを深く学んだことのない人でも、読むことができると思います。 私自身もAIの知識を身に着けるために、学部時代にまずこの本を読んだのを覚えています。 また、この本は機械学習や深層学習などある程度AIに馴染みのある人にもオススメです。特に、日本ディープラーニング協会主催のジェネラリスト検定(G検定)の推薦図書にもなっており、研究者や専門家がAIの全体像を改めて見直すきっかけにもなると思います。 


 AIを学ぶ上で大切なことは、AIの体系的な知識を身に着けることと、それを実装(プログラミング)する能力を磨くことです。特に、機械学習やディープラーニング(深層学習)などのAIの分野はPythonで実装されることが多いです。 Pythonは、無料でだれでも簡単に環境を構築できる、他のプログラミング言語に比べて理解しやすいなどの利点があり、現在最もホットなプログラミング言語となっています。そのため、Pythonの入門書は大変多く出版されており、どの参考書で勉強すべきか初学者の方には悩みどころでもあると思います。 今回紹介した本は、Pythonのプログラムを理解するために必要な最低限の知識を短時間で習得するという点に重点を置いており、非常に効率の良い本であると思います。この本よりも、内容が豊富かつ応用まで網羅した本も多々出版されていますが、私個人の意見としては、いきなりPythonの応用まで勉強する必要はなく、最重要事項だけ抑えた後は、実際に機械学習やディープラーニングのコードを実装していく中で、Pythonの使い方を学んでいけばいいと思います。 

 【中級者(AIの勉強をした経験はあるが、実装などには自信がない人)向け】 


 この本は、プログラミング言語Pythonを使って機械学習を実装することを目的とした本です。 レベルとしては機械学習やPythonを少しかじったことがあるけれども、実際にscikit-learnなど機械学習のモジュールの使い方に慣れたいといった読者を想定しています。 Pythonで機械学習を学べる本は、この本に限らずたくさんありますが、理論面と実装面どちらもバランスよく掲載されているという面では、この本が一番ではないかなと思います。 AIに関する参考書では、海外の文献を日本語訳して出版されているものが多いのですが、日本語版の欠点として、訳がぎこちない、学問的にしっくりこないなどの指摘がされることがよくあります。 ですが、この本は、AIに造詣が深い研究者による訳語本であるため、比較的理解しやすい日本語になっているとをいう点もオススメです。 ただ、機械学習の中でも特に注目を集めているディープラーニング(深層学習)に関する記述は少ないので、ディープラーニングを重点的に学びたい方は、他の本を読む必要がある事に注意してください。


 この本は、AIの中でも特にディープラーニングの理論と実装に重点を置いた本です。 Pythonによるディープラーニング実装に関する本は、これまで多数出版されていますが、それらの本の多くは、実装に重きをおいており、ディープラーニングの詳細な理論の説明(特にディープラーニングを理解するために必要な数学的背景)は省略されています。 ですが、この本では、ディープラーニングの数学的背景を詳細にかつ丁寧に説明しています。また、行列や微分など、導入のための数学的準備も丁寧にまとめられているため、数学に不安のある文系の方でも理解することができると思います。 そして、私がこの本をオススメする一番の点は、Pythonによるコードを一から書いていく点です。ほとんどの参考書では、ディープラーニングの実装は専用のモジュール(KerasやPytorch)を利用して書かれているため、プログラムの中で実際にどのような計算がされているか理解することができません。そのため、ディープラーニングの仕組みはわからないけど、とりあえず実装はできるといった状態に陥る危険性があります。 この本では、ディープラーニングの数学的背景を理解した上で一から自分の手でコードを書いていくので、完成までに時間はかかりますが、しっかりとした理解を身に着けることができると思います。 私の経験上、一度自分の手でディープラーニングを実装できるようになってから、専用のモジュールなどを使って実装することをオススメします。 

 【上級者向け(AIの理論・実装ともに自信があり、さらに奥深い内容まで学びたい人)向け】
 

 ディープラーニングの基本的な仕組み、実装の手順を理解したら、次段階としてディープラーニングの更なる応用を学びましょう。今回紹介する本では、ディープラーニングの中でも、画像認識に特化した畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)や時系列分析に特化した再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)など様々な応用分野が紹介されています。 またこの本では、Kerasと呼ばれるPythonのディープラーニング用のライブラリを用いて、ディープラーニングを実装しています。Kerasを用いることで、ディープラーニングを非常に簡単に実装することができます。中級者向けの項目で紹介した本などを参考にして、ディープラーニングのコードを一から実装できるようになった後には、Kerasなどの専用ライブラリを利用した実装法もマスターしておくといいでしょう。 唯一この本の欠点を挙げるとすれば、日本語訳が少しぎこちない点です。この本の著者は、Kerasの開発者でもあるので、英語に自信がある人は原文のまま読む方が理解しやすいかもしれません。 


 最後に紹介する本は、データ分析の技術に特化した本です。この本は、Kaggleと呼ばれるデータ分析コンペで高得点をたたき出すために必要な、前処理や検証方法など技術を一冊に網羅した本です。 Kaggleは世界中のデータサイエンティストたちがさまざまなテーマでデータ分析の技術を競い合うコンペで、上位入賞者は高額の賞金や就職先の紹介など様々な恩恵を得ることができます。 また、Kaggleにはデータサイエンティスト通しの交流の場が用意されていたり、上位入賞者のコードやデータ分析法が公開されているため、データサイエンスを学びたての人であっても気軽に参加することができます。機械学習やディープラーニングをある程度理解し、Pythonで実装できるようになった人は、Kaggleに積極的に参加し、実際のデータ分析に触れてみることを推奨します。 この本では、実際のデータサイエンティストたちによる、Kaggleで上位に入賞するためのさまざまなノウハウが紹介されているため、この本を参考にしてKaggleで上位入賞を目指してみましょう。 

 ここまで、初級者向けから上級者向けまでいくつか参考書を紹介させていただきました。 いきなり難しい本で勉強する必要はないと思うので、まずは自分が読みやすいと感じるレベルから始めるといいでしょう。 前にも少し触れましたが、AI系の勉強をこれから始めたい人は、是非、機械学習に関する(数学的)知識とそれを実装するプログラミング能力を同時に磨く必要があることを意識してください。

2020年10月9日金曜日

【証明の書き方】水曜担当 富岡

水曜担当の数理科学科修士1年の富岡です.今回は,レポートの答案を書くときの注意点について述べたいと思います.証明中の文章を一言一句絶対にこう書かなければならないなどというわけではなく,あくまで参考として活用してください.



・「任意の」と「ある」
 例えば,$V, W$ を実ベクトル空間とし,線形写像 $T : V → W$ が具体的に与えられたとき,$T$ が単射であることを示そうとしているとします.方針は $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示すことにします.そこで,証明のはじめに「$Tv = 0$ とすると,〜〜」というように書いたとしましょう.このとき,まずい点が二つあります.一つは,「$v$ が何者か明記されていない」点です.この場合,文脈や $T$ の定義を考えれば「$v$ は $V$ の元である」ことは明らかといえば明らかですが,新しく導入された記号については必ずそれが何を表しているのか説明するべきです.意味が一意に定まる場合でも,いきなり未定義の文字が出てくるのは証明の読みにくさに繋がります.さて,「$v$ は $V$ の元である」ということは良いとしましょう.このとき,もう一つまずい点があります.それは「$v$ は 任意に取ってきた元なのか,特定のものを選んで取ってきたのか明記されていない」点です.「$V$ の任意の元 $v$ に対して 〜〜が成立つ」と「$V$ のある元 $v$ に対して 〜〜が成立つ」という二つの命題は全く異なる主張を述べているので,「任意の」なのか「ある」なのかをはっきりさせなければ,証明しようとしている主張が何かが分かりません.いまの場合は「任意の」が正解で,「$V$ の任意の元 $v$ に対し,$Tv=0$ とする.このとき,〜〜」や「$V$ の元 $v$ を任意に取る.$Tv=0$ とすると,〜〜」などと書くと良いでしょう.
 余談ですが,証明において「$V$ の任意の元 $v$ に対し,$Tv=0$ ならば,$v=0$ である」という主張が証明されたとすると,ここで示したのは $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ になります.元々は $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示そうとしていたので, $\{0\} \subset \mathrm{Ker}(T)$ も本当は示さなければいけません. しかし,$\mathrm{Ker}(T)$の定義からこれは明らかです.$\{0\} \subset \mathrm{Ker}(T)$ の部分は空気のような事実なので,非自明な $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ だけを示して $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示したことにして証明を終えても個人的には問題無いと思います.このことについてはレポートの採点基準によるので,不安な人は「 $\mathrm{Ker}(T) = \{0\}$ を示す.$\{0\} \subset \mathrm{Ker}(T)$ は $\mathrm{Ker}(T)$ の定義から明らかなので, $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ を示す.$V$ の任意の元 $v$ に対し,$Tv=0$ とする.このとき,〜〜である.よって,$v=0$ である.すなわち, $\mathrm{Ker}(T) \subset \{0\}$ が示された」のように書くと安心だと思います(これで減点食らったらすみません).





・例の構成
 問題:実2次行列 $A, B$ に対して,$AB=BA$ は常に成立つか.成立つならば証明を,成立たなければ反例を挙げよ.

 解説:答えはもちろん「成立たない」なので,反例を挙げる必要があります.ここで,反例を挙げるとはどういうことでしょう?どういう作業が反例を挙げるということでしょう?与えられた命題に対し,反例を挙げるということは「命題の否定が成立つような具体例を述べる」ということです.いまの場合,「実2次行列 $A, B$ に対して,$AB=BA$ は常に成立つ」が与えられた命題で,その否定は「実2次行列 $A, B$ に対して,$AB=BA$ が常に成立つとは限らない」,すなわち「実2次行列 $A, B$ で $AB \neq BA$ となるものが存在する」です.よって,すべきことは「$AB \neq BA$ となる実2次行列 $A, B$ を具体的に与える」ことです.例えば \[ A=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}, B=\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \] とすれば \[ AB=\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}, BA=\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \] なので,$AB \neq BA$となることが分かります.これで,反例を挙げられたことになります.しかし,例えば \[ A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}, B=\begin{pmatrix} e & f \\ g & h \end{pmatrix}, \ AB=\begin{pmatrix} ae+bg & af+bh \\ ce+dg & cf+bh \end{pmatrix}, \\ BA=\begin{pmatrix} ea+fc & eb+fd \\ ga+hc & gb+hd \end{pmatrix} \] とすれば,$AB \neq BA$となることが分かる,というのは誤りです.この解答では,$AB$と$BA$の成分が一見違って見えても,奇跡的にどんな$a, b, c, d, e, f, g, h$に対しても実は計算すると値が一致するかもしれないという可能性を潰し切れていません.もちろん,そんなことはありえないわけですが,具体的な値で確かめない限り証明にはなり得ません.よってこれでは,反例を挙げたことにはなりません.たまにこのような勘違いをしている人もいるので参考にしてみてください.








・背理法依存症
 「任意の正実数 $a, b$ に対し,$a < b$ ならば $\sqrt{a} < \sqrt{b}$ が成立つ」という命題を考えてみましょう.これの証明として例えば次のようなものがあります:

 もしある正実数 $a, b$ で $a < b$ かつ $\sqrt{a} \geq \sqrt{b}$ となるものが存在したとする.このとき, $\sqrt{a} \geq \sqrt{b}$ の両辺を2乗すると $a \geq b$ となり, $a < b$ と矛盾する.よって,任意の正実数 $a, b$ に対し,$a < b$ ならば $\sqrt{a} < \sqrt{b}$  とならなければならない.

  背理法による証明です.これでも証明として何も問題ありません.ところで,この命題を証明するには背理法は必要でしょうか?実はこの命題の証明には背理法は必要ありません.実際,$\sqrt{b}-\sqrt{a}=(b-a)/(\sqrt{b}+\sqrt{a}) > 0$ から主張が従います.背理法を使わなくても証明できるなら,背理法を使わない方が良いというのが,おそらく数学をやっている多くの人たちの中での共通認識だと思います.理由の一つに,背理法を避けられない部分を明らかにしたいという論理学的な観点があると思います.また,実用上の問題として,背理法の議論の部分は正しくない仮定から推論を重ねているので,議論をリサイクルすることができません.どうせ証明をするなら,直接的な証明を試み,証明の中で使われた命題を個別に抜き出しておいた方が得だと思います.もしかしたら,その命題が他の場面でも役に立つことがあるかもしれませんし,何より証明の構造がよく理解できるようになると思います.
 初学の段階では,証明の方針が立たないととりあえず背理法を試みがちな気がします.「定義に従って示す」ということに慣れていないとそのような状態に陥りやすいと思います.前回のブログでも書きましたが,自分で証明を考えるときは,「用語の定義は何か,仮定は何か,示したい結論は何か,仮定と結論を論理式や数式で表すとどうなるか」をはじめに確認してから行うのが良いです.この作業に慣れることで「定義に従って示す」ということが徐々にできるようになると思います.どうしても背理法を使わなければならないときは,ギリギリまで背理法を使うステップを保留し,最後の仕上げとして「ところで,〜〜と仮定する.このとき,今までの議論から〇〇ということが分かるが,これは××に矛盾する.よって〜〜ではない」のようにすると,背理法を使うまでの議論はリサイクルできるようになっていますし,証明の構造も良く分かるようになると思います.




 他にも気をつけた方が良いことはあります.例えば,とても基本的なことですが,「証明中の文章が日本語として読めるか」です.数学独特の構文に引っ張られてしまっているせいなのか分かりませんが,接続詞が不自然だったり,明らかに日本語としておかしい文章を書いたりしていることが多々ある気がします.証明を書き終わったら,一度読んでみて不自然な箇所がないか確認してみてください.
  以上のことに気をつけて証明問題に取り組んでみてください.読みやすい証明,すなわち,論理的に明快な証明を書くことは自身の数学力の向上に繋がるので,ぜひこれらのことを意識して頑張ってください.



それでは今回はこの辺で.See you next time !

富岡











2020年7月7日火曜日

化学Aや物理化学系の授業の教科書紹介

こんにちは。
火曜担当の江口です。

春学期はもう後半ですね。
今学期はすべてオンライン授業ということで、例年より課題が多くて大変だという話も聞きます。
上手いこと情報収集をして、乗り切っていきたいですね。

今回は、化学Aや物理化学系の授業で使える教科書について紹介します。
授業内で配布される資料があるかと思いますが、それだけだと、なかなか理解が進まない・・・という人は他の教科書・参考書にあたってみるといいと思います。

山を登るにも、道がいくつもあるように、同じ現象を説明するのにも、説明する方法はいくつもあります。
授業の資料ではわからないなーという部分があったら、ほかの教科書でその部分がどのように説明されているかチェックしてみるといいと思います。


アトキンス物理化学 【指定資料】
 非常に有名な教科書。様々な物理化学系の授業で教科書に指定されています。邦訳は2017年に第10版が出ています。理工学メディアセンター本館一階の、指定資料コーナー(431@A6@2-1-R2)に置いてあります。古いバージョンも、本館2階や、別館にあります。


バーロー物理化学 【指定資料】
 これもまた有名な教科書。最新版は第6版。アトキンスで疑問に思った部分があったらこっちで調べてみると良いかもしれません。こちらもまた、理工学メディアセンター本館一階、指定資料コーナー(431@B2@1-1@C.4)に置いてありますし、本館2階にも置いてあります。

 物理化学の隠れた?名著。説明、式の導出が丁寧でわかりやすい。演習問題の解答は、別冊(英語版のみ)。本館の2階にあります。

他にも、ムーア物理化学カステラン物理化学アルバーティ物理化学など、様々な教科書があります。中身を見てみて自分に合ったものを選び、気に入ったら購入すると良いと思います。

上に挙げた教科書はすべて、理工学メディアセンターで所蔵しています。是非活用してみて下さい!



【指定図書】とは?
授業シラバスの教科書・参考書欄に記載されている図書のことです。
その分野を学ぶ際の非常にオーソドックスな本と言い換えても良いかもしれません。
理工学メディアセンター本館1階に、指定図書コーナーとして本がまとめられています。
こういったものも活用していきたいですね!


以上で、役に立ちそうな教科書紹介を終わります。
いずれも理工学メディアセンターに蔵書があるものなので、内容を自分の目で確かめ、自分に合った教科書を使って学んでいって下さい!

江口


2020年7月3日金曜日

【番外編】理工学部全体の4%しかいないレア学科:化学科について

2018-19年度に化学と英語を中心に相談を受け付けていた、元スタッフの菅野です。
昨年2019年のノーベル化学賞はリチウムイオン電池に関してで、日本人の受賞者に注目が集まりましたね。本当に素晴らしいことだと思います。


では慶應の化学はいまどういう状況なのか?
今回は「実学のすゝめ 番外編」ということで、慶應の基礎化学を担っている化学科について、化学科の学生である著者(現在 理工学研究科後期博士課程1年)がざっくりと紹介します。

0. 内容

1. 数字でみる化学科
2. どういう学生がいるのか?
3. 研究室紹介


1. 数字でみる化学科

4%

→→→慶應理工学部全体(約1000人)に占める化学科の人数(40人)。キャンパス内で出会えたらラッキー!な激レア人種です。逆に、学科内の人はみんな知りあいになり、どのサークルに入っているとか何のバイトしているとかまで大抵知っています。

5:1

→→→男子:女子のおよその比率。理工学部の中でも女子学生の比率が比較的高いと思います。

2人

→→→先生1人に対する学生の数。先生との距離がとにかく近く、国立大学レベルかもしれません。

7/25→14/25

→→→2年生と3年生のおよその週コマ数2年生の授業はおよそ週7コマですが、3年生はおよそ週14コマと2倍になります。週7コマというのは、他学科2年生と比べてもかなり時間のゆとりがあるのですが(要するにヒマ)、3年生は少し忙しめになります。

2. どんな学生がいるのか?

実は化学科は、第一希望で入ってきた学生と、そうではない学生がおよそ半々くらいという二極化が起きている珍しい(?)学科です。その二極化というのも極端で、第一志望でくる子は学問越え(注1)してでも来る子がいる一方で、そうでない子は最低志望順位(注2)で来る学生も多くいるほどです。
二極化しているがゆえに、実にバラエティ豊かです。第一希望で来る学生は、本当に優秀な人が多いです。学部時代の成績におけるA-Cが150単位という成績オバケもいました。実際に私の知る限りでは、矢上賞を受賞する学生が毎年のように居るほか、慶應理工学部のパンフレットに写真掲載された学生もいました。一方、第一志望でなかった学生もユニークな人が多いです。例えば化学以外の道を見出した学生として、プロギャンブラーになった人、某国立大学の法学研究科に進学した人などを知っています。しかしもっと興味深いのは、化学科に不本意ながら入学しても、次第に化学を好きになる学生が意外と多いということです。実は私も、化学科は第一志望ではありませんでした。しかし3年次の学生実験と4年次の卒業研究で有機化学に目覚め、修士課程はおろか博士課程にも進学するほどにまでなりました。

(注1)(注2)
慶應理工学部では、入学時に将来の学科の大枠は決まっていますが、1年次は教養課程に近く、理工学全般を広く学びます。ちなみに化学科へ進学するためには学門3(2020年度より学問E)しかなく、他の学門から行くには学問越え(後述)という超難関を突破するしかありません。
2年次に専門学科に別れますが、成績に応じて行くことのできる学科がある程度制限されます。人気の高い学科は競争が激しく、第一志望で行くことのできない学生もでてきます。一方、成績が飛びぬけて良い学生に対しては、本来進学できない学科へ移ることが許される特別な制度があり、これを「学問越え」といいます。


3. 研究室紹介

●化学の分野

一般的に化学は、大きく分けて3つの分野に分けることができます。ただし近年、境界はあいまいになってきているうえに、他分野との融合も著しくなっているので参考までに。

有機化学:炭素の化学。食べ物、プラスチック、生物をはじめとして身の回りのほとんどが炭素を含む有機化合物です。

無機化学:炭素以外の元素の化学。よく知られている無機化合物としては、半導体や金属材料などがあります。

物理化学:化学を数学的に解析する分野。化学反応を計算によって予測するなど、近年目まぐるしい発展がみられます。

●研究室(2020年度)

ここでは、私の個人的な見解を簡単にのせます(重要)。正確かつ詳細な情報に関しては公式HPをご覧ください。

有機金属化学研究室(垣内史敏教授)
新しい化学反応の開発を研究している。世界を驚かせた初の実用的炭素ー水素結合の官能基化反応(村井反応)やチェーンウォーキングという現象を利用した化学反応の研究が有名。

天然物化学研究室(末永聖武教授)
自然界に隠されている有用な有機化合物を見つけ、その利用を目指している。シアノバクテリア由来の新規物質発見などが有名。

機能材料化学研究室(羽曾部卓准教授)
人口光合成や太陽電池、光る物質の開発など光化学の研究を主に行っている。ほんの刹那の化学反応(ナノ秒=0.000000001秒。瞬き一回はおよそ0.2秒)を分析したりする高い装置がある。

生体分子化学研究室(藤本ゆかり教授)
免疫に関わる化合物に関して広く研究している。新規化学合成法の開発だけでなく、免疫機構にどう関与しているかの生化学についても研究している。

・反応有機化学研究室(山田徹教授)
新しい化学反応の開発を研究している。二酸化炭素を有用化合物へと変換する化学反応や、マイクロ波を利用した化学反応が有名。

無機物性化学研究室(栄長泰明教授)
新しい機能材料の研究開発を行っている。光で磁性を制御する材料や、特にダイヤモンド電極を用いた新規分析法や新規合成法の開発が有名。

表面化学研究室(近藤寛教授)
放射光X線技術を用いて化学反応の解明を行っている。特に現代科学に欠かせない「触媒」の機能解明に関する研究が有名。

・物理化学研究室(中島敦教授)
新しい物質概念の創出を目指し、原子をたくさん凝集してできた「ナノクラスター」に関して研究している。特に多成分クラスターに力を入れており、磁性クラスターや巨大クラスターなどが有名。

・生命機構化学研究室(古川良明准教授)
金属を含むタンパク質について研究している。特にタンパク質が、銅という金属をどう補足するのかを調べ、その解明によりALSなど難病治療への応用も目指している。

・理論分子化学研究室 (畑中美穂 准教授)
2020年度新設。コンピュータを用いた計算により、化学現象を理解することを目指している。新しい触媒や発光材料のシミュレーションや、機械学習による材料特性の予測を行っている。


いかがでしょうか。
化学科は、学生も教員も研究も多様でユニークです。

今回はこの辺にて。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


菅野

2020年6月15日月曜日

【読書のすゝめ】月曜日担当

こんにちは

ラーニングサポート 月曜日担当(建築系)の川本です
今回は私が学部1年生の頃に出会ったおすすめの本を5冊ほど紹介したいと思います


『赤と黒』 スタンダール著


「赤と黒」は実際に起きた事件などを題材にとった、フランスの作家スタンダールによる長編小説です。1954年に刊行されたサマセット・モームによる「世界の十大小説」に選ばれた古典作品でもありとても有名なものです。
主人公である野心的な青年、ジュリアン・ソレルを通して青春や恋愛を描いているとともに、「1830年代史」として実際に起きた事件などを題材として社会を鋭く批判しています。階層闘争から描かれた青年の野心に色々なことを考えさせられた作品です。

『ゴリオ爺さん』 バルザック著


「ゴリオ爺さん」は1819年のパリを舞台とした小説で、こちらも先に述べた「世界の十大小説」のひとつです。ゴリオが娘の不孝を嘆きながら孤独に死んでいく様が描かれた悲劇の作品であり、誠実さや愛情への裏切りがリアリティをもって表現されています。冒頭では登場人物と舞台設定を細かく説明しており、それらを把握することで読みやすくなると思います。

「地下室の手記」はロシアの小説家ドストエフスキーによる中編小説です。「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」など著名な作品が多くありますが、なかでも私はこの「地下室の手記」が一番のおすすめです。
主人公の過剰なまでの自意識が面白くもどこかで共感できる作品です。自分の内面と向き合うきっかけになり得るおすすめの本です。

「ノルウェイの森」は村上春樹による長編小説です。とても有名な作品なので、知っている方も多いのではないでしょうか。主人公が学生時代を回想する視点で描かれているため、この本を大学入学したての頃「大学生活=ノルウェイの森」という想像(舞台は1970年頃なので実際は全く違いましたが)をしながら楽しく読みました。様々な小説や映画などの文化が引用され登場するので、そのような興味を広げていくきっかけになり得るおすすめの本です。

『辰野金吾』 河上眞理、清水重敦著


辰野金吾は東京駅や日本銀行本店をはじめとする建築作品を設計した日本建築界の礎を築いた建築家のひとりです。
工部大学校(現在の東大工学部)の第一回生として入学し、曾禰達蔵ら同期と切磋琢磨し学ぶ様子やヨーロッパで学んだ「建築」を日本に根付かせるために苦心した歴史が描かれています。
良い作品を設計し、国を発展させるために努力する姿勢にこの本を通じて触れることで、大学で学問を修めるうえでのモチベーションになるはずです!

今回は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

川本

2020年6月9日火曜日

2020年度 木曜担当 自己紹介と参考書紹介

こんにちは.

今年度のラーニングサポート木曜日担当 数理科学科修士1年の富岡駿允です.

簡単な自己紹介をします.私は数理科学科の勝良研究室に所属しており,現在は作用素環論についての研究(というか勉強)をしています.私はもともと量子力学の数学的構造に興味があり,そのために関数解析という分野を少し勉強していました.作用素環論の勉強を始めたのは勝良研究室に所属してからです.作用素環論はvon Neumannという人が量子力学を記述するために必要な数学として導入したと言われています.勝良研は作用素環論の研究室なので,私の興味に合っています.また,趣味的にですが,私は幾何も面白いと思っているので,幾何の授業の質問があれば,私も一緒に考えて勉強したいなぁというつもりでいます(質問に答えられなかったらすみません).





さて今回は,大学1年生の皆さんに向けて,数学を自習できるように参考書をいくつか挙げてみようと思います.授業を聞くだけでなく,自分で本を読んで数学を勉強する時間はとても大切なので,ぜひここに挙げている参考書を活用してみてください(もちろん,ここに挙げている参考書以外の本で勉強するのもアリです).




線形代数




微積分




集合・位相






定番な本や私が個人的に気に入っている本を挙げました.他にも本はたくさんあります.書店等で中身を見て自分に合ったものを選ぶのが良いです.線形代数と微積分については授業で教科書も配布されているはずなので,授業を理解するには教科書を参考にするのが一番だと思います.しかし,授業だけで重要事項すべてを扱えるわけではないので,やはり自分に合った参考書を一冊は持っておくことをお勧めします.また,本の記述が分かりにくかったり,定理の証明でめちゃくちゃメンドくさい議論をしていたりすることがあります.そういう場合は自分で証明を考えてみたり,あるいは他の本も見てみたりすると分かるようになるかもしれません.自分で証明を考えるときは,「用語の定義は何か,仮定は何か,示したい結論は何か,仮定と結論を論理式や数式で表すとどうなるか」をはじめに確認してから行うのが良いです.つまり,証明におけるスタート地点,ゴール地点,証明で使う道具の確認です.これらをせずにいきなり証明を考えようとしても,何を議論すべきなのかも分からない状態では議論のしようがありません.簡単な命題なら,この機械的な作業だけで証明が終わることがありますし,この作業を通じて自分の頭の中を整理することができ,論理的に考える良い訓練になると思います.






いかがだったでしょうか.大学1年生で習う数学は基礎として本当に大切なので,この記事が皆さんにとって少しでも役に立てたなら幸いです.




それでは今回はこの辺で.See you next time !

富岡





























2020年6月5日金曜日

水曜担当 自己紹介&研究紹介(1)

初めまして!
今年度のラーニングサポートで水曜前半を担当する修士1年の東です。

今回は自己紹介と研究紹介をさせていただきます!

私は慶應の物理学科を卒業し、今は大学院理工学研究科の物理学専修に属しています。
私の研究室は、統計物理学の理論研究を行なっています。私の具体的な研究テーマは次回で紹介することにして、今回は統計物理学の魅力についてお話ししたいと思います。


物理学というと、まず思い浮かべるのは、宇宙論や素粒子論などかも知れません。これらの分野は、相対性理論や量子力学を駆使し、宇宙の構造や宇宙の果て、物質の究極の構成単位を研究していく分野です。よく物理学の花形と言われるだけあって、非常に魅力的ですね。

しかし、統計物理学にも、宇宙論や素粒子論に劣らない独自の魅力があるんです!
統計物理学は、簡単に言うと、粒子がたくさん集まった系を研究する分野です。素粒子論とは真逆の方向性ですね。

粒子がたくさん集まった系?
なんでそんなもの研究する必要があるの?
面白いの?

と思われるかもしれませんが、魅力があると言える理由は主に二つあります(もっとあるかも知れませんが、修士1年の自分が思いつく範囲でご容赦ください)。

1つは、粒子がたくさん集まると、系の構成要素一つ一つを追いかけているだけでは思いもよらなかった現象が起こり得るからです。超伝導がいい例ですね。超伝導は、ある温度以下で電気抵抗が0となる現象です。超伝導の原理は、原子や電子(あるいはクォークなどの素粒子)を一個ずつ調べても決して分からないわけですね。
このように、構成要素が多数集まることで、少数のときには思いもよらなかった現象が起きるという事実は、統計物理学の面白さの一つなのではないでしょうか?

二つ目を話します。我々が普段目にしている物質は、アヴォガドロ数(約6×10²³)程度の原子や分子が集まってできています。
粒子が一つや二つなら、古典力学の運動方程式や、量子力学のシュレディンガー方程式を解くことで、挙動を予想できます。しかし、粒子が三つ集まった場合(三体問題)は、一般に解けないことが知られています(古典力学においては、ポアンカレによって数学的に証明されている!)。
厳密に解けなくても、粒子が少数のときは、連立方程式(運動方程式やシュレディンガー方程式)の近似解をコンピューターで計算できます。しかし、アヴォガドロ数オーダーの連立方程式は、計算量が膨大すぎて、どんなに高性能のコンピューターを用いても、近似解を求めることすら不可能なわけです。
しかし、粒子の数が膨大で、無限大とみなせる場合は、また話が違ってきます。なぜなら、平均値や分散といった量が意味を持ってくるからです。つまり、粒子数が無限大とみなせる場合は、力学に確率論や統計学を組み合わせることで、むしろ厳密な計算が可能となります。これが統計物理学の二つ目の魅力です!


少し長くなってしまいましたが、統計物理学の魅力が伝わったでしょうか?
関連したヨビノリ たくみの動画も、とても参考になるのでお勧めします!
https://www.youtube.com/watch?v=jTB-_bxv8ps
最後まで読んで頂きありがとうございます!