こんにちは
2022年度秋学期 金曜担当 の 化学科 修士1年 村野 です
担当時間は 14:00 ~ 15:30 です
・学部の化学系科目で分からないことがある
・化学系科目の宿題のヒントがほしい
・実験レポートの書き方で悩んでいる
という方は,ぜひ質問・相談に来てみてください
もちろん,授業以外の学生生活に関することでも大丈夫です
今日は,わたしの所属する近藤寛研究室(化学科)のテーマである「表面化学」について紹介します
表面化学の定義
多くの人にとって「表面化学」という分野はあまり馴染みがないと思います
「表面化学」は文字通り「表面」の「化学反応」を研究する学問です
より厳密に言うと,
「表面」:固体(あるいは 液体)と気体の接する面
「化学反応」:分子どうしの相互作用によって新たな分子が生成する現象
と考えれば,
「表面化学」:固体(あるいは 液体)と気体の接する面において,気体分子どうしの相互作用によって新たな分子が生成する現象を研究する学問
と説明することができます
身の回りの表面化学
そんな風に言われると,何だか難しいようですが,
実は,表面の化学反応 は,わたしたちの身の回りに ごくふつうに 存在します
例えば,
秋になると,キンモクセイの香りが街に漂います
キンモクセイの香りの正体は,大きな有機分子(香り分子)です
わたしたちが甘い香りを感じるのは,キンモクセイの花から放たれた 香り分子 が,鼻の内側の表面に付着し,化学反応を起こすからです
また,
歩道を歩いていると,車道との間にあるガードレールがところどころ錆びています
ガードレールは鉄鋼でできていて,ふつう ペンキで保護されています
しかし,年月を経て,ペンキが剥がれると,むき出しになった鉄鋼の表面に,水分子が付着して,鉄鋼を酸化鉄に変えていってしまうのです
表面化学の恩恵
表面の化学反応 が意外と身近な存在であることはわかりました
しかし,なぜ 表面の化学反応 が重要なのでしょうか
それを理解することで,わたしたちの生活にどんな御利益があるのでしょうか
実は,表面は 産業上の様々な場面で 重要な役割を担っています
例えば,自動車のマフラーには 排気ガス中の有害な物質(一酸化炭素や一酸化窒素など)を除去するための,三元触媒が使われています
三元触媒は パラジウム(Pd)やロジウム(Rh)などの貴金属を主成分とし,その表面で有害物質 が 酸化還元 されることで,人体に無害な成分として排出されます
また,化石燃料に代わる新たなエネルギー源として期待される水素エネルギーですが,水素ガスは臭気がなく,漏れ出すと爆発のおそれがあるため,水素ガスを検出して危険を知らせてくれるセンサが必要です
白金(Pt)は 表面に水素が付着すると,付着量に応じて電気抵抗が変化するため,高感度の水素検出センサとして使用することができます
このように,表面化学を理解し,制御することが,わたしたちの生活には欠かせないのです
表面化学研究室(近藤寛研究室)
最後に,わたしの所属する 表面化学研究室 について紹介します
表面化学研究室では,産業的に重要な触媒やセンサーの動作メカニズム解明を目指しています
用いる手法は主に,分光法です
すなわち,化学反応を起こす物質の「表面」に 光(電磁波)を照射し,反射した光や放出される電子を分析します
これにより,表面を構成する元素の種類や量,状態を知ることができます
とはいえ,実際に産業で用いられる触媒やセンサーの「表面」は複雑な構造をしていて,これに光を照射しても,解釈できるデータにならないことがほとんどです
そこで,この複雑な表面を,いくつかの単純な構造表面に分離して,それぞれについて分析を行います
それら別々の表面から得られた情報を,いかに統合して,全体像を導き出すかというところが,研究の肝になります
少しでも興味が湧いたら,ぜひ 研究室のホームページ にアクセスしてみてください!
http://www.chem.keio.ac.jp/kondoh/index/jp/
以上です
最後まで読んでくださり,ありがとうございます
村野