こんにちは!
毎週火曜日14:00~15:30を担当しています、応用化学科修士2年の西出です。
今回は最近私が勉強している"第一原理計算"ついてお話ししたいと思います!
第一原理計算とは材料開発の分野などで広く用いられている理論計算の手法であり、有名なスーパーコンピューター”富岳”を用いるほど、高度な計算です。かならずしも”富岳”のような超ハイスペックなコンピューターが必要なわけではなく、普段使いしているノートパソコンでも計算を行うことができます!(その分計算に時間がかかったりしてしまいますが。)
今年の春学期まで第一原理計算のことをほぼ知らなかった自分ができるかぎりわかりやすく第一原理計算の内容とやり方をお話ししていきますので是非是非読んでみて下さい!
第一原理計算ってなに?
第一原理計算とは、量子力学に基づき物質中の電子の状態を理論計算により求めることで、理論的に物質の性質を予測するものです。
量子力学??電子の状態??矢上キャンパスに通う方々には1年生の時に授業で出てきたシュレディンガー方程式などが頭をちらつくのではないでしょうか。まさにそのシュレディンガー方程式を使わないといけません(笑)。
化学などに詳しくない方に向けてより簡単な説明を。
多くの材料化学の研究では、まず欲しい機能(色を自由自在に変えられるなど)を定め、その後そのような機能を持たせるためにはどのような元素を用いてどのような形状の物質を作ればいいのか、と決めていきます。118種類ある元素から適切な元素を選び、その後物質の形態(薄いフィルムがいいのか、粒子がいいのか、トゲトゲのウニのような形がいいのかなど)を決めていきます。ここで決めたものを実際に実験で合成し、その特性を評価することで自分の予想通りの特性を持つ物質ができたのかを確認し、もし自分の予想との間にギャップがあればその原因を考え新たな試料を合成していく流れになります。
これに対し第一原理計算では、現実の物質を原子レベルでパソコンの中に再現することで物質がどのような性質を持つかを理論的に予測するものです。実験を行うことなく、経験的な要素も一切用いず、物質の性質を予測することができます。実際に、明らかになっていないメカニズムの解明や実験により得られた結果に対する理論的な検証として幅広く用いられています。
第一原理計算ってすごいものなのでは?
そうなんです。第一原理計算は非常に強力なツールであり、理論と実験の両方から研究を行えば、理論に基づいた実りのある考察や議論が可能です。Google Scholar(論文検索サイト)で第一原理計算(英語ではFirst Principles Calculation)と検索すれば多くの論文がヒットし、第一原理計算の結果だけで1本の論文を書き上げているものも少なくありません。
しかし、そんな第一原理計算にも課題はあります。
最大の課題は現実と理論のギャップにあると私は考えています。現実の世界での物質の状態をコンピューターの中で正確に再現することは非常に難しく、これを実現しようとすると、高度な計算が求められます。一般的に計算の難易度が上がると計算にかかる時間も増えてしまうため、難しい計算を行えば行うほど、多くの時間を計算に必要としてしまいます。
そのような背景もあり、計算には非常にハイスペックなコンピューターを用いることが多いです。有名なスーパーコンピュータ”富岳”を用いることで多くの研究成果もあげられています。下にいくつかの例を示します。
理化学研究所、東京大学、日本原子力研究開発機構らの共同研究:
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/7869/
筑波大学、神戸大学、国立研究開発法人科学技術振興機構の共同研究:https://www.tsukuba.ac.jp/journal/technology-materials/20220106140000.html
第一原理計算ってどうやるの?
第一原理計算のために必要なものは、PCと第一原理計算用のソフトウェアです。PCについては、ハイスペックなものの方が計算が早く終わりますが、普段使いしているノートパソコンのようなものでも簡単な計算は可能です。第一原理計算用のソフトウェアについては、最も有名なものはVASPと呼ばれる有料のソフトウェアですが、Quantum EspressoやPHASEといったフリーソフトもあり、第一原理計算をやってみよう!と思った際にはフリーソフトからやってみることがオススメです!
さいごに
いかがでしたでしょうか?
かなり難しく専門的な話になってしまいましたが、へぇそんなことができるんだ!と思って頂ければ非常に嬉しいです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
西出