何度かに分けて、「研究と特許」についてお伝えしていきます。
今回は、特許から得られる資金がいかに莫大か、を知っていただけたらと思います。
特許料収入はノーベル賞金をも上回る
12月10日、ノーベル賞受賞式が行われました。
ご存知の通り、ノーベル賞の賞金は莫大です。その額は、900万スウェーデンクローナであり、日本円にして1億1500万となっています。他の賞金、例えばフィールズ賞やマグサイサイ賞、五輪報奨金は数百万円程度であることと比べると、いかにずば抜けた額なのかが分かります。
2015年に医学・生理学賞を受賞した日本人に大村智先生がおり、賞金を3人で山分けした結果、およそ3000万を得ています。しかし、これよりも大きな研究費を先生らは獲得しています。代表的なのは、国からの研究費である科研費でしょう。大村先生が北里研究所に移ってから獲得してきた科研費は、総額1.18億円といわれています(1)。もっとも、これは比較的少ないと思われます。同じくノーベル賞を受賞した日本人研究者の科研費は、大隅良典先生(2016年):18億円、本庶佑先生(2018年):47億円となっています(2)。
もちろん、いずれも莫大な額なのですが、大村先生にとっては、これらの資金よりももっと多くを稼ぐ術があります。それは、特許料収入です。
「研究を経営せよ」
余談ですが、さきほど述べた仕組みは技術移転といわれ、特許と密接に関わった深く面白い事情があります。アメリカでは近年、”大学の技術移転”が一大ビジネスになっています。この辺はまた別途、お伝えします。
研究と特許#1
今回は、特許料がいかに莫大な研究費となりうるかをお伝えしました。もちろん、特許料がすべて研究費になるわけではありませんし、特許料であまり稼ぐことができない研究分野もあります。また、「お金のための研究ばかりしていたらおしまいだ」との批判も、多くあるかもしれません。しかし、特許をうまく活用して研究に活かす姿勢は、学ぶ価値があるものではないでしょうか。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。ご意見等がありましたら、いつでもコメントをお待ちしております。
参考文献
(1)原泰史、”オープンイノベーションを政府は支持できるのかー大村智氏ノーベル賞受賞の意義”、https://www.slideshare.net/scirexcenter/ss-64898705(引用日:2018年12月21日)
(2)文部科学省、”総合科学技術・イノベーション会議有識者議員懇談会 文部科学省戻出資料 平成30年10月18日”、https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20181018/siryo2.pdf(引用日:2018年12月14日)
(3)週間朝日2015年10月15日、”研究所債券、特許収入250億円 ノーベル賞・大村智教授の経営手腕”、https://dot.asahi.com/wa/2015101400056.html?page=1(引用日:2018年12月21日)
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