こんにちは、ラーニングサポート月曜後半(14:00-15:30)担当の草壁です。
以前 自己紹介の際に少し書いた通り、私は修士1年の秋学期から1年半、大学院のダブルディグリー制度を利用して、ドイツのアーヘン工科大学に留学していました。今回は、留学に興味がある人向けに体験談を書きたいと思います。
大きく分けて、以下のことについて書きます。
- アーヘンの街・アーヘン工科大学について
- 事前準備
- 現地での日常生活・大学での生活
1. アーヘンについて
アーヘンは、ドイツのNRW(Nordrhein-Westfalen)州にある、人口25万人ほどの少し規模の小さい都市で、ベルギーとオランダの国境に接しており、ドイツの最西端に位置します。かつてカール大帝(Karl der Große, Charlemagne)が戴冠した街として有名で、歴史的な意味を持った都市です。こうした歴史を鑑み、アーヘンは毎年、ヨーロッパの統一に貢献した人物に対してカール大帝賞(Karlspreis)という賞を授与しています。アーヘンという名前はドイツ語のAachenに由来しますが、実はフランス語・オランダ語・イタリア語の名前もあり、それぞれAix-la-Chapelle、Aken、Aquisgranaと呼ばれています。
アーヘンは、観光という観点からはあまり見るものが多いわけではありませんが、世界初の世界遺産のひとつであるアーヘン大聖堂(Aachener Dom)、市役所庁舎(Rathaus)、温泉が湧き出ているエリゼンブルネン(Elisenbrunnen)、3か国の国境が1点にあつまるポイント(Dreiländereck)などが有名です。また、アーヘン工科大学(RWTH Aachen)には大きなキャンパス(Campus Melaten)が1つありますが、基本的には街の中に大学の建物が点在しており、大学の歴史も長いことから、大学の建物も観光名所と言えるかもしれません。大学の建物で有名なものには、メインビルディング(Hauptgebäude)、SuperC、カルマン門(Kármántor)などがあります。なお、このカルマン門は、通り抜けると一生アーヘン工科大学から卒業できなくなるという迷信があるので、私自身通り抜けたことはありませんし、通り抜けた強者のうわさなども耳にしたことはありません(笑)。
アーヘン工科大学は世界的にとても有名な工科大学で、特に機械工学の教育・研究に定評があります。名前は工科大学(Rheinisch-Westfaelische Technische Hochschule)となっていますが、実は医学部や社会学部、文学部、経済学部なども存在します。慶應からは、理工学系だけでなく、それ以外の学部にも交換留学制度で留学することができます。慶應の理工学研究科とアーヘン工科大学の機械工学部や電気工学部は、ダブルディグリープログラムの協定を結んでおり、このプログラムで私は留学しました。
2. 事前準備
私にとっては初めての留学ということで、事前準備では様々なことを行いましたが、主に(1) 奨学金の申し込みと(2)ドイツ語の勉強の2点を重点的に行いました。
(1) 奨学金の申し込み
留学で一番気になる・どうにかしなければならないこととして、金銭面の問題が挙げられると思います。私が留学した時(現在もそうですが……)は1ユーロ170円前後と歴史的な対ユーロの円安で、なるべくなら奨学金をユーロでもらいたいなと思っていましたが、幸いにもドイツ学術交流会(DAAD)の修士奨学生として採用していただきました。このDAAD奨学金はとても好待遇の奨学金で、月額1,000ユーロの支給があり、保険やドイツ語試験の検定料補助、往復航空券などの支給が別にある上、少額ですが研究費も支給されたり、ミュンヘンなどの賃貸物件の相場が高い都市に留学する学生には、家賃補助も出たりします。ほかにも、留学前に2か月間のドイツ語研修を現地の語学学校で受講できます。ダブルディグリープログラムの修士課程で渡独を考えている方には、このDAAD奨学金を強くお勧めします。なお、他に応募した奨学金などの情報は、私の留学報告書(閲覧にはkeio.jpのGoogleアカウントが必要です)の方に詳しく記載しているので、興味のある方はぜひのぞいてみてください!
(2)ドイツ語の勉強
ドイツに留学する以上、普段ドイツ語を使って生活することになるので、ドイツ語を学び始めました。私はダブルディグリープログラムでドイツを選びましたが、第二外国語としてはフランス語を選択していたため、ドイツ語を学び始めたのは渡航の1年半前からでした。また、アーヘン工科大学の修士課程では、近年より多くの授業が英語開講になっている傾向にあります(電気工学部はすべて英語開講)が、機械工学部などではいまだにドイツ語開講という授業がいくつか存在しています。実際、流体力学とレオロジーの授業と試験や、境界層理論の講義で使用するテキストがすべてドイツ語でした。ドイツ語の勉強法なども留学報告書に詳しく記載しているので、興味がある方は読んでみてください!
3. 現地での日常生活・大学での生活
(1)生活面
アーヘンは人口25万人のうち5万人が学生のため、れっきとした学生街です。アーヘンの街自体こじんまりとしていて比較的小さいので、学生にとってはとても住みやすい街だと思います。例えば、食生活に関しては学生向けにレストランなども比較的低価格で(日本円にすると依然高いですが……)提供してくれています。ドイツの「名物料理」Doener(「ドュナー」、ケバブをパンにはさんだもの)はアーヘンでは高くても7ユーロくらいで、とても美味しいのに加えて量が多いので、時間のないときや自炊が面倒くさいときに学生がテイクアウトで買う食べ物として親しまれています。余談ですが、ドイツのレストランでは、水の注文にもお金がかかります(水道水を頼めば無料です)が、ビールの方が水より安いので、ビールをちゃっかり頼んでしまいます。飲みすぎには注意してください。なお、レストランで食べるとお金がかかりますが、自炊をすると食費は結構節約できます。特に、フルーツや野菜は日本の相場に比べて安いので、その点は助かりました。
生活面で大変な点は2つあります。1つ目は行政系の手続きです。特に、ビザの発行や住民票登録などはオンラインでアポイントメントを取る必要がありますが、全然空いていないので取れません。また、担当者によって言うことがかなり違うため、あっちの部署に行ってくれと言われて該当の部署に行ったら、それはうちではやってないと言われて最初の部署に行って振出しに戻るなどといった事象が多々発生します。フラストレーションがたまりますが、こればっかりは我慢するしかありません。2つ目は電車です。ドイツ鉄道(Deutsche Bahn、通称DB)は遅刻魔としてその名をヨーロッパ全土にとどろかせています。1時間や2時間の遅刻は当たり前、事前通告なしの運休も日常茶飯事です。みんな苛立ちを覚えているので、飲み会では、少なくとも1回はDBの話題になります。ドイツ鉄道を使ってどこかに旅行する際は、目的地に1時間か2時間前には着くように予定を立てましょう。
(2)勉強面
ドイツの大学は、1年が講義期間(Vorlesungszeit)と講義なし期間(Vorlesungsfreie Zeit)に分かれており、3か月の講義期間と3か月の講義なし期間が1セットで1セメスターとなります。講義なし期間は何があるかというと、日本ではこの部分が夏休みや春休みになりますが、ドイツの大学ではこの期間はKlausurphase(試験期間)で、試験がぎっしり詰まっています。お察しの通り、〇〇休みというものは大学にはなく、講義期間・講義なし期間ともに勉強する形になります。僕の印象では、日本の大学に比べ試験がとても難しく、十分な準備時間がなければ試験に合格することはできません。試験期間は特に、1日中勉強だけするといった生活スタイルになります。
このように書くと余暇はないのかと思われるかもしれませんが、ちゃんとあります。たとえば、講義期間の週末や講義終わりなどには、友達と会ったり、旅行に行ったりすることができます。また、試験は夏学期であれば7月の後半から8月の前半にかけてと9月の後半に集中しているため、たとえば8月前半に4つ、9月後半に2つの試験があるという場合は、8月の中旬に4日くらいは暇な時間がとれるので、そういった期間に少し遠い場所に旅行できます。実際、僕はそのような「すきま時間」を見つけて、いろいろな場所に旅行に行きました。
ここでは生活面と勉強面についてのみ書きましたが、私の留学報告書では、どのようなことを普段していたか、どのような勉強スケジュールだったのかなど詳しく書いているので、こちらもぜひのぞいてみてください!
草壁
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